まるで何かに削り取られたかのように隙間が開いた谷がある。戦車が一台通るのがやっとという程度の広さの入り組んだ谷だ。
 その谷は年中霧が発生しており、視界は決して開けてはいない。だからこの谷を通ろうと思うなら、慎重に運転しなければならないだろう。
 しかし………そんな谷を二両の戦車と一台のキャンピングカーがアクセル全開の全速力で駆け抜けようとしていた。どの車両も装甲タイルが熱せられたロウのように熔けてただれていた。
「一体………」
 軽戦車リトル・ユニコーンを駆るヨハンは額に冷たい汗を滲ませながら後ろを振り返る。絞りたてのミルクのような白い霧の向こうから、エンジンを咆哮させて必死に走るリトル・ユニコーンに追いすがろうとする毒々しい紫紺の霧が迫る。紫紺の霧はリトル・ユニコーンを手づかみするかのように包み込もうとするが、ヨハンはとっさにハンドルを切ってそれをかわした。紫紺の霧は壁のように立ちはだかる谷に触れ、そしてその触れられた箇所はドロリと熔けただれはじめた。
 ヨハンは血の気が失せた表情で叫んだ。
「一体、アイツは何なんだ!?」

メタルマックス外伝
鋼の聖女
FULL METAL MARY

第七話「魔の霧を払え!」



 ………冒頭より三時間ほど前に時計の針は戻る。
 大破壊によってアスファルトの化粧を剥がされ、地面がむき出しになった道路を大小二両の戦車と一台の車が走る。
 履帯を軋ませながら黒い装甲を陽の光にさらしているのはアイアン・ナイトと呼ばれる重戦車だ。太く逞しい一二五ミリキャノン砲が頼もしい。アイアン・ナイトを運転するのは二〇年以上モンスターハンターを続けているクレメントという男だった。両手足の指の数より多くのお尋ね者を倒した大ベテランハンターである。短く乱暴に切られた髪は整髪料で後方に撫で付けられ、一八〇センチに届くか届かないかという体を青い長袖のTシャツとはきふるしたジーンズで包み、さらに上から銃弾の穴が何箇所かに見られる防弾チョッキを身に着けている。
 アイアン・ナイトに続くのはアイアン・ナイトより二回り以上小さな軽戦車だった。しかしその動きはリトル・ユニコーンの名に相応しく軽快である。リトル・ユニコーンの操縦席に腰を置くのはクレメントの息子であるヨハンという明日で一三歳となる予定の少年だった。モンスターハンターの父と母から生まれたヨハンはこの世に生れ落ちてからずっと戦場に身を置いている。だから一二歳と三六四日と言う年齢にはそぐわないほどの実戦経験を誇り、この若さで中堅ハンターと呼んでも差支えがないほどに度胸と錬度は鍛えられている。しかし見た目には年相応の少年である。平均身長より少し小さな背丈を気にしてはいるが。彼はチェック柄のシャツとまだまあたらしいジーンズ、そして迷彩柄のジャケットという衣装を好んでいた。
 そして最後尾を行くのはジャック・イン・ザ・ボックスと名付けられたキャンピングカーだ。キャンピングカーであるために戦闘力は高くないが、しかし居住性はバツグンで、野宿することになればクレメントとヨハンはこの車のベッドで寝ることにしている。ジャック・イン・ザ・ボックスのハンドルをまだ慣れぬ様子で扱うのはマリィという名の少女だ。背にかかるほど長く、そして最上級の絹糸のように艶やかな黒髪をゴム紐で一つに束ね、発展途上の肢体を若草色のワンピースに包み、さらにその下にデニムパンツをはいている。まるで美を司る神が苦心して作り上げたのではないかと思われる容姿を誇るが、彼女は決して飾り物などではない。何者かに追われ姿を消した父、リカルドを探すために彼女は戦う事を決めたという芯の強さも持ち合わせているのだった。
 この三つの車両と老若男女三人のパーティーが東を目指して砂塵を巻き上げていた。彼らは何故に東を目指すのだろうか?
「この先にある谷はモンスターすら近寄らないらしい」
 クレメントがトーナの町でその噂を聞きつけたのがすべての始まりだった。そしてその噂には続きがあり、「その谷を調べに行ったハンターが何人もいるが、一人として彼らが帰ってくることはなかった」とのことだった。その谷は年中霧が発生しており、モンスターすら近寄らず、そして調査に出かけたハンターも戻ってこない。モンスターハンターたちを統轄するハンターオフィスはトーナの東にある谷を「魔の霧の谷」と名付け、賞金をかけて調査と探索をしてくれるハンターを募集し始めたのだった。
 この広い荒野のどこにいるのかわからないマリィの父、リカルドを探さなければならないクレメントたちは向こうからこちらに接触してもらうために有名なハンターになる必要があった。そんな彼らにとってこの「魔の霧の谷」の調査はうってつけの仕事だといえた。故にクレメントたちはこの調査に乗り出したのだった。



「………ここが噂の谷か」
 マリィがジャック・イン・ザ・ボックスの狭い厨房で昼食を作る音を聞きながら、クレメントは谷を見ながら呟いた。クレメントたちは谷の前に車両を停め、ジャック・イン・ザ・ボックスの中で休憩を取っていた。
 彼らの目の前に広がるのはまるで谷を覆うように広がる霧、そして壁のようにそびえる崖。この谷を見たクレメントの最初の感想は「迷宮の入り口」だった。
「本当にここに来るまで一度もモンスターに遭わなかったね、父さん」
「やはりモンスターもここに近付かないのかな」
「でもどうして近付かないのでしょうか?」
 マリィがそう尋ねながら皿に肉と野菜の缶詰を適当に炒めた昼食を盛りつける。
「ハンターが行方不明になってるんだから、おそらくこの谷にはモンスターがいるんだろうが………」
「でも周辺のモンスターもここには近寄らないみたいだよ」
 モンスターはどういう理屈なのかは知らないが、とにかく人間だけを襲う。たとえ種類が全然違っていても、モンスター同士は滅多なことでは殺しあわない。モンスターはただひたすらに人間だけを襲うのだった。
「そこがわっかんねぇんだよな………」
 クレメントはそう呟きながら昼食を頬張る。
「ん、美味いな」
 前々からマリィの料理の腕前は並ではないと思っていたが、ジャック・イン・ザ・ボックスに厨房と言う設備があるためにクレメントたちパーティーの食糧事情はさらに好転することとなった。
「ジャック・イン・ザ・ボックスさまさまだね」
 ヨハンもそう言ってマリィの料理を褒める。そんな感じで目の前の谷に対する詮索はいつの間にか中断となった。どうせこの食事を終えたら谷の中に入るのだ。せめて食事中くらいは平和でありたいものだ。その考えが三人にはあったためだった。
 昼食を終えて半時間ほど休憩を取ってから、いよいよクレメントらは谷の中に侵入を開始したのだった。



 谷の底をキャタピラをきしませて走るアイアン・ナイトを先頭に、ジャック・イン・ザ・ボックス、リトル・ユニコーンと続く。深い谷の底は陽の光も届かず、まるで夜のように暗かった。さらに真っ白い霧に覆われているのだから視界の面では最悪のコンディションといえた。
「チッ、幅が狭すぎるな」
 三台の車両の中で一番全幅が広いアイアン・ナイトにとってこの車一台が通れるか通れないかの広さの谷底は非常に進みづらかった。
「マリィ、大丈夫かい?」
 三台の中では一番幅が小さいリトル・ユニコーンは比較的進みやすそうだ。まだ車の運転に慣れていないであろうマリィを気遣う余裕すらある。
「は、はい………何とか大丈……夫………キャッ!?」
 ガリリ
 マリィが「大丈夫」といった矢先にジャック・イン・ザ・ボックスは横っ腹を崖に擦り合わせてしまう。
「無理はしなくてゆっくりでいいぞ」
「す、すいません………」
「まぁ、所せましと装甲タイルを貼り付けてるから擦っても全然構わないさ」
「ところで父さん、砲塔の旋回はできる?」
 ヨハンに訊かれたクレメントは「んー」としばらく間を置いてから答えた。
「もう少し開けた場所があれば砲塔の旋回もできるかもしれないが………この幅が続くなら無理っぽいな」
「そう。後ろからの敵には気をつけたほうがよさそうだね」
「うん………ん?」
 クレメントがそう頷いた時、クレメントは不意にブレーキを踏んでアイアン・ナイトを停止させる。そして砲塔上のハッチを開いたかと思うと懐中電灯を片手に周囲を見回す。
「父さん………?」
「いや、何かいるような気がしてな………」
「何かって、何が………?」
 クレメントの行動の真意がつかめず、怪訝な表情でヨハンも砲塔から顔を出す。そしてヨハンも懐中電灯を取り出し、父の方を照らす。
「………?」
 ヨハンは最初、自分の見間違いかと思った。しかし何度目をこすってもそれはヨハンの視界に映り続けていた。クレメントの背後の白い霧の中をうごめく紫色の霧………。それはアイアン・ナイトにまとわりつくように漂っていた。そしてその紫色は次第に部分を増やしていたのだった!
「父さん、後ろ!」
「え?」
 クレメントが振り向いた時、まるで後ろからそっと近付いた獲物に逃げられまいとする虫取りのように紫の霧がクレメントに飛びかかった。紫の霧はクレメントの右腕に触れ………。
「う、ぐあああーッ!?」
 クレメントが着ていた青いTシャツの袖を溶かし、さらにその下のクレメントの皮膚すらも紫の霧は溶かしてみせたのだった。酸をかけられたかのようにただれるクレメントの右腕。クレメントは右腕を押さえながら砲塔の下に身を隠し、ハッチを硬く閉ざす。密閉されたハッチの中に紫の霧は入ることができなかったが、ならばと霧は目標を変えたのだった。紫の霧はその濃度を増し、アイアン・ナイトの装甲タイルを今度は溶かし始める。アイアン・ナイトを徹底的に溶かし、そして中にいるクレメントをも溶かそうというのか。
「父さん!」
 ヨハンはリトル・ユニコーンの七・七ミリ機銃をアイアン・ナイトに向けて放つ。アイアン・ナイトの装甲ならば七.七ミリ機銃弾を簡単に弾くから、アイアン・ナイトには何の問題もないはず。そう判断しての発射だった。
 だが紫の霧は機銃弾を意にも介さない。機銃弾は霧を撃ちぬくどころか逆に溶かされてしまう有様だ。
「マリィ、お前の副砲を使え!」
 無線からクレメントの叫び声。マリィはクレメントに言われるまま副砲である火炎放射器を放つ。銃口から伸びる炎の熱によって紫の霧はアイアン・ナイトから離れる。
「野郎!」
 アイアン・ナイトから離れさせられた紫の霧を狙ってアイアン・ナイトの一二五ミリキャノンとリトル・ユニコーンの五五ミリ砲が狙いを定め、そして放たれる。しかし並のモンスターならば一撃で吹き飛ばす一二五ミリ砲弾ですら紫の霧には通用しなかった。さすがに一瞬で溶かされることはなかったが、空を切るのと同様に砲弾は紫の霧をすり抜けていくのだった。
「な………」
 再びアイアン・ナイトに迫ろうとする紫の霧。しかしジャック・イン・ザ・ボックスの火炎放射器の炎がそれを阻む。どうやらあの禍々しい色の霧に通用するのは火炎放射器だけのようだ。しかし火を嫌がりはするものの、火炎放射器によってダメージを受けている風には見えない。
「チッ、一旦逃げるぞ! マリィ、奴を牽制してくれ!!」
「は、はい!」



 そして物語は冒頭のシーンへと続くのだった。
 紆余曲折の末に、一時的にだが紫の霧を振り切ったクレメントたちは一旦戦車を降り、顔をつき合わせて状況を整理する事を始めた。
 あの紫の霧についてわかったことは幾つかある。
 あれは強酸性の気体であること。当然、気体なのだから銃弾や砲弾でダメージを与えられるはずがない。
 あれは火を嫌がる傾向があること。理由こそ不明だが、あの霧は火には近付こうとしない。別に火によってダメージを受けている様子ではないが………? だが何よりその事実により驚かされるのは、霧に意志があることだろう。大破壊によって生まれたモンスターはたいてい意志を持っていたりするが、まさか霧にまで意志が存在するとは………。
「………打つ手なし、ということか」
 あの霧について全部わかったわけではないだろうが、しかし今のクレメントらが持つ情報ではその結論を下すしかなかろう。
「しっかし火が苦手、か………バーナードラゴンくらい積んでおけばよかったかもね」
 ヨハンが言うバーナードラゴンとは神話の竜の如き業火を噴出すことができる特殊砲SEのことだ。クレメントは重量がかさみ、装甲タイルがあまり貼れなくなることからSEの搭載を嫌う傾向がある。よほど特殊な敵に出会わない限りは主砲の一撃で戦いうるからだ。そしてどうしてもSEが必要な敵と戦った場合は一度退却して態勢を立て直せばいいとクレメントは考えていた。
 だが今回は迷路のように入り組んでいるこの谷の底を一目散に逃げているうちにクレメントたちは出口がどこにあるのかわからなくなっていた。そのために退却は非常に困難になっているといえよう。
「とにかく奴の弱点を探そう」
 紫の霧に溶かされたクレメントの右腕に包帯を巻きながらヨハンが言った。クレメントは傷口に沁みる消毒液に眉を少しだけひそめながら息子の次の言葉を待った。
「この世に無敵だとか不死身だとかそんなものはありはしない。必ず弱点があるはずなんだ」
「へ………。こんなに強い息子を持ってる父親なんざそうはいないだろうな」
「が、頑張りましょう!」
 クレメントとマリィはヨハンの言葉を信じるしかなかった。打つ手なしと諦めて死ぬのを待つなんてまっぴらごめんだ。どんな状況でも諦めることなく、最後の最後まで道を探し続ける。大破壊以後の人間は、こうして生き延びてきたのだ。自分たちも決して諦めはしない………。
 ヨハンがそう考え、固く拳を握り締めた時、照明によって斬り裂かれた闇の向こうに紫の色が見えた。
「チッ、追いついてきやがったか」
 クレメントは自分の足元に置いていた瓶を掴むと口の部分に詰められた布に火を灯して紫の霧に向かって投げつけた。瓶の中にはアルコールがたっぷり入っている。瓶が崖の壁面にぶつかって割れ、飛び散るアルコールに引火して激しく燃え盛る。クレメントが投げつけたのは火炎瓶であった。紫の霧は火炎瓶の炎を嫌ってクレメントたちから少し離れる。その隙に戦車に乗り込んだクレメントらは一目散で紫の霧の前から逃げる。
 どれくらい走っただろうか。
 いつしかクレメントたちは谷の最深部に入ろうとしていた。そしてクレメントたちは谷の奥深くでトンでもないものを見つけてしまったのだった。
「これは………?」
 こんな谷の奥深くにそびえ立っていたのは研究所であった。ボロボロに錆付いた看板には「科学兵器研究所」の文字が見える。
「大破壊以前の研究所………?」
「ここにあの霧を倒すためのヒントがあるかもしれないな」
 クレメントはそう言うと戦車から降り、研究所の中に入る事を決めた。ヨハンとマリィもそれに続く。



 照明の消えた研究所内は光がまったく当らないために真っ暗であった。そして谷と同様に生き物の気配がまったく感じられなかった。
 懐中電灯の細い明かりを頼りに研究所を歩くクレメントたち。入り口をくぐってロビーの右手にある部屋に入る。そこは資料室のようだった。部屋のドアにそう書かれていた。
「ここなら何を研究していたのかわかるかも………」
 ヨハンは期待を胸に懐中電灯の明かりを動かして資料室全体を見回す。部屋は壁から壁へ等間隔に本棚が並べられており、埃を被ったファイルバインダーが無数、本棚には納められていた。そのうちの一つを手にとって開いてみる。クレメントとマリィがヨハンの背中越しにファイルの内容を覗く。
「………『二月一三日。強酸性の霧を完成させる。紫色をしているために我々はあの霧をシウンと名付ける』」
 そのファイルをある程度流し読みしてわかったことは、あの紫の霧は一種の化学兵器であるらしい。従来の毒ガスなどと違い、コンピュータによって管制され、こちらが指定した標的のみを溶かして殺すといういわば指向性化学兵器だという。管制を担当するコンピュータから半径数キロ程度までしか自由に操れないが、しかし今後の改良では基地にいながら敵国の首都を襲うことができるようになるだろう。このシウンと名付けられたガスさえあれば我が国の国防は万全である。ヨハンが手に取ったファイルはその言葉で締めくくられていた。
「……………」
 互いに顔を見合わせ、それぞれで別のファイルを見てみる。ヨハンが選んだファイルはさっきの物より時間が過ぎた物を選んでみた。そしてヨハンはこのファイルを見て呆然となる。
「………信じられない。突如コンピュータが暴走を始めた。他の施設との連絡は完全に遮断された。この谷の上で空を見ていた者がいうには無数の流星が地上に降り注いたらしい。まさか核戦争………?」
 これは貴重な、大破壊の瞬間のレポートではなかろうか。ヨハンは唾を飲みながら次のページを捲る。
「………シウンは完全に我々の管制を離れた。シウンは近付いてくるありとあらゆる生命体を襲うようになった。何ということだろう。ただ、シウンを管制しているコンピュータがあるこの研究所を襲うことだけはないのが救いか。………いや、何が救いだ。我々には限られた食料と水しか持たない。この研究所で我々は緩慢に死を待つしかないのだ。恐ろしい。我々の境遇も恐ろしいが、何より自分たちが生み出したシウンが恐ろしい。我々は知らずに悪魔を生み出していたのだから………」
 ヨハンはもはや唾を飲むことも、息をすることすら忘れてファイルを注視する。ヨハンの震える指がファイルのページを捲る。
「………おかしい。暴走を始めたシウン管制のコンピュータのプログラムを何度書き直しても、即座に狂わせられる。どうやら外部からのアクセスで瞬時に修正は書き直されるようだ。『NOAH』………プログラムが書き換えられる瞬間にそのような文字が見えたと言う者がいた。ノア………? 地球救済センターにあるマザーコンピュータと同じ名前だが、これは一体………?」
「ヨハン」
 ファイルを読みふけっていたヨハンはクレメントに声をかけられてようやく我に返る。
「何かわかったか?」
「このファイルは………大破壊について書いてるよ。読む?」
 伝説として語り継がれる事件の当事者が書き記した貴重な資料。それだけに一文字一文字が重く、ヨハンはファイルに目を通しているだけで目眩がした。あまりな事実に頭が呆然とする。
「まぁ、昔のことなんざ知ってもしょうがあんめぇ。そりゃ無意味だな」
「そう………。じゃあ、父さんは?」
「俺のはシウンとかいうあの紫の霧に関する内容だった」
 クレメントがかいつまんで説明するには、あの霧は超細小の微粒子機械が混じっており、それがあの霧を操っているのだという。炎を苦手とするのはこの機械がまだ試作段階で、耐火性が低いからなのだそうだ。将来的には炎の中でも何の障害もない完璧な物を作る、と研究所内では研究が重ねられていたらしい。しかしそこまで完成することはなく、大破壊によってこの研究は終わりを告げたらしかった。
「私はこの研究所の案内図を見つけました」
 マリィがヨハンらの前に出したのは研究所の見取り図だった。メインコンピュータルームと矢印で紹介される部屋は地下にある様子だ。
 クレメントは最年長としてヨハンたちの見つけた情報をまとめて、これからの動向を口にした。
「とにかくこの研究所内にあるコンピュータとやらを破壊してジャック・イン・ザ・ボックスの火炎放射器で一気に決めてしまおう」
「はい、父さん」
 父の言葉にヨハンは快活に応えた。
「了解です」
 マリィは落ち着いた様子で静かに応えた。
「俺はここでもう少し資料を漁ってみるつもりだ。セキュリティシステムにゃ気をつけろよ、お前ら」
「「はい」」
 ヨハンとマリィは懐中電灯を片手に回れ右………をしようとするのをクレメントは不意に呼び止めた。
「あ、そうだ」
「?」
「こんな時に何だが、明日はお前の誕生日だったな」
「あ、そういえば………」
「へぇ、明日なんですか? おめでとうございます」
「いやぁ、大したことじゃないけどね」
 何せ父に言われるまでヨハンはそのことをすっかり忘れていた。迂闊と笑うよりは、日にちのことが気にならなくなるくらいに毎日慌しく生きているといった所か。「大したことじゃない」というヨハンの言葉はあながち嘘でもない。
「ま、とにかく気をつけて行けよ」
 クレメントはそう言って二人を送り出した。そして大破壊以前の面影を色濃く残すこの資料室で一人溜息を吐くのだった。



 地下に続く階段をヨハンとマリィは慎重に降りる。
 マリィは若干引け気味の足取りで、USPコンパクトをしっかりと握り締めながら。
 ヨハンは見た目には悠然と階段を降りる。だがよく見ればその手のひらはかなり汗ばんでおり、その内心をよく表していた。肩に提げたAK47がズシリと重い。
 階段が終わろうとする時、ヨハンは足を止めてマリィにも立ち止まるように手でマリィの進路を遮った。
「セキュリティシステムがあるとやっかいだから、少し待って。それから目と耳は塞いでて」
 ヨハンは手榴弾を取り出すと地下の廊下の向こう側に放り投げた。数瞬の間を置いて激しい爆発音と閃光が炸裂する。ヨハンが投げたのは音と光で敵を怯ませるフラッシュグレネードだった。だが廊下は何事もなかったかのように静かだ。
「………別に何もないのかな?」
 それはそれでつまらないな、などと取りとめのないことを考えながらヨハンはマリィを背にしながら懐中電灯の灯りを頼りに地下の廊下を歩く。おっかなびっくりのマリィの前で(表面上だけ)平静を装うヨハン。もしかして今の僕ってカッコイイんじゃないか? そんなことを考えると顔が自然とにやけてくる。
「ヨハン?」
 怪訝そうな声でマリィはヨハンの名を呼んだ。マリィの声は斜め上からヨハンの耳に届く。そしてヨハンはビクッと体を震わせた。
「な、なななな、何だよ、マリィ!?」
「いえ、何だか楽しそうだったから………」
「ま、まぁ、僕はこういうの慣れっこだからさ!」
 コホンと咳を一つ。そしてヨハンは再び歩き始める。
 ………しかしよく考えてみたら僕ってマリィより背が低いんだな、マリィの声が斜め上から聞こえるくらいなんだから。やっぱ頼りがいのある男になるにはもう少しタッパが欲しいよな〜。「もう少し」というか、「もっと」か………。はぁ、ゲンナリ。
 急ににやけたり、自分に声をかけられてビックリしたり、急に落胆したり………。目まぐるしいほどに表情を変えるヨハンをマリィはきょとんとした眼で見るのであった。
 とにかく、二人は研究所のメインコンピュータルームにたどり着く。地上階は電気がなく照明も消えていたが、どうやらこの地下には自家発電設備があるらしい。この発電設備でおこした電気でコンピュータは稼動を続けている様子だった。
 メインコンピュータルームの扉は本来、IDカードを差し込まないと開かない物だったが、研究所の職員が開きっぱなしにしていたのでヨハンたちは扉を爆破して開けなくてすんでいた。
「………えっと、これがシウンを管制しているコンピュータかな?」
 メインコンピュータルームは一面がコンピュータの端末やら機材やらで埋まっていた。ヨハンはコンピュータのモニターを覗き込む。
「……………??」
 しかしヨハンにはモニターに表示されている内容を理解することは不可能だった。眉をしかめて首を捻るばかりだ。
「ヨハン、これがシウンを操ってるみたいよ」
 ヨハンには何のことかわからない内容だが、マリィには理解できるらしい。マリィはコンソールに向かってキーボードを叩く。さすがは伝説のハンター兼メカニックであるリカルドの娘だ。一目でこのコンピュータのプログラムのどこを書き換えればいいのかわかったらしい。コンピュータに疎いヨハンはそんな風に考えた。
「『ノア』はもうこの世にはない………。今ならこの暴走したプログラムを書きなおせるはず」
 マリィはそう呟くと目にも留まらぬ速さでキーボードを叩いていく。
「ノアはもうこの世にはない」
 マリィの呟いた言葉がヨハンの耳に引っかかる。あれ? 僕はここの研究所で読んだ大破壊に関する記述をみんなに教えたっけ? いや、父さんが「昔のことなんざ知ってもしょうがあんめぇ」といって読む事を拒否して、そしてマリィも読んでいないはず………。ヨハンの思考がそこまで及んだ時、急にメインコンピュータルームに警報が鳴り響いた。
 ヨハンは考える事をやめてマリィに尋ねる。
「な、一体どうしたの!?」
「ダメ、このコンピュータはウィルスに侵されているんだわ。このウィルスを駆除しない限り、プログラムをいくら書き換えようとしても無駄………」
「じゃあこうするしかないってわけだね」
 ヨハンはそう言うと肩に提げていたAK47を構え、目の前にあるコンピュータに向けて一弾倉すべてを撃ち込んだ。銃口から発せられるマズルフラッシュがヨハンやマリィの顔を瞬間的に照らす。
 ヨハンがAK47のマガジンを交換して、さらに撃ち込もうとするがその必要はなかった。たった一弾倉の連射でシウンを操るコンピュータは停止していたからだ。
「………っと。これでいいんでしょ?」
「え、ええ………」
「じゃあ父さんの所に戻ろう」



 地上に戻ったヨハンたちをクレメントは外に停めてあるアイアン・ナイトの砲塔上に座して待っていた。
「おぅ、おかえり」
「地下のコンピュータは破壊してきたよ」
「そうか、ご苦労さん」
 クレメントはそう言うとヨハンたちに休憩を取るように言った。ここで休憩して、万端の態勢で谷を抜けよう。クレメントの言葉を聞いてヨハンは初めて自分が空腹になっていた事に気付いた。
「じゃあ、急いで食事の用意をしますね」
 マリィはそう言うとジャック・イン・ザ・ボックスの厨房にかけてあるエプロンを身に着けて言った。
 そして食事を済ませたヨハンたちはいよいよ谷を抜けるために出発する。
「ヨハン、お前が先頭を行け。マリィちゃんのジャック・イン・ザ・ボックスを真ん中に置いて、俺が殿を守る」
「え? ああ、わかったよ」
 いつも自分を先頭にしている父が殿を務めると言い出すなんて、珍しいこともあるものだな。ヨハンはそう思ったが、特には考えなかった。
 ヨハンはリトル・ユニコーンのチヨノフターボを始動させると三人の先頭に立って走り始めた。じめっと湿った谷の土を泥として履帯は跳ね飛ばす。
 そしてしばらく走り続けると、ヨハンたちの上空に紫色の霧、シウンが立ち込め始めた。シウンはコンピュータによる管制を失ってもある程度の自立行動が可能だったらしく、自分の周囲に動く生き物を襲うと言う基本動作だけは続けているようだった。シウンは以前よりはるかに直線的な動きでヨハンたちに襲い掛かる。
「マリィ!」
「はい!」
 マリィの乗るジャック・イン・ザ・ボックスが火炎放射器を放つ。伸びる炎に対し、シウンは回避運動をとろうともせず、まっすぐに向かっていく。そして炎の渦を真正面から受けたシウンは炎によって微粒子状の制御装置を破壊されて散っていく。
「やった!」
 火炎放射器の炎によってシウンは少しずつではあるが確かに消滅しつつある。火炎放射器の燃料はたっぷりとある。これならこの酸性霧のモンスターを倒すことができるだろう。ヨハンは難敵に対し勝利を確信して喜びをあらわにする。
 しかしヨハンの喜びはすぐに消えた。なぜならば火炎放射器で消えつつあるはずのシウンだが、しかしヨハンたちの上空を覆うシウンの量はドンドン増えていくばかりだったからだ。
 気がつけば上空だけではない。周辺空域すべてが紫色の霧に包まれていた。
「こ、これは………」
 火炎放射器のトリガーを引き続けるマリィに焦りの色が見える。
「僕たちを襲ったのはシウンの一部だったんだ………その気になれば、この谷を覆いつくすことができるくらいにシウンはあるんだ!」
 ヨハンは辺り一面を覆いつくすほどの超高濃度のシウンを見て目を剥いた。これだけの量のシウンに火炎放射器一丁ではあまりに不釣合い。砂漠にジョウロで水を撒くようなものだ。つまり自分たちは絶体絶命の状況なのだ!
「………ヨハン、マリィ。二人ともよく聞いてくれ」
 しかしこの状況下でもクレメントの声は冷静さを保っていた。その声を聞いてヨハンは思い直した。そうだ、父さんがいればどんな危機だって越えられる。父さんさえ、父さんさえいてくれたら………。
「エンジンを全開にして、全速力でこの場を脱出するんだ。その際、火炎放射器で道を切り開くんだ。そうすれば少しは熔かされるだろうが、逃げることはできるはずだ」
 クレメントはシウンの包囲網を火炎放射器で焼き払って一気に駆け抜けろと言った。しかしそれはシウンがこの場に留まり続けていなければできない芸当ではなかろうか?
「で、でもクレメントさん、シウンは私たちを追ってきますよ!?」
「それなら大丈夫だ。コイツは俺が何とかする」
 有無を言わさぬクレメントの口調。その口調に並ならぬ決意を感じたのはヨハンだった。
「父さん………? まさか………」
「急げ! シウンは酸性の霧の全部を俺たちにぶつけようとしているんだ。今が安全なのはその終結が終わってないだけなんだぞ!」
 ヨハンの言葉を遮ってクレメントは怒鳴る。
「父さんを置いていけるはずがないだろ!」
「そう言うと思ってな………お前のCユニットに細工させてもらったよ」
「え………?」
 ガクン。ヨハンのリトル・ユニコーンが履帯を動かし始める。ヨハンの足はアクセルに触れてもいない。ブレーキを踏んでもその動きは止まろうとしなかった。
「父さん! 父さん!?」
「お前のリトル・ユニコーンのCユニットを俺のエミーと交換しておいたんだ。エミーの帰還プログラムをこちらでONにした………」
「やめてよ! 父さんを置いていけるはずがないじゃないか!!」
 ヨハンの意志に反して谷の出口へ向かおうとするリトル・ユニコーン。マリィは火炎放射器を放ってヨハンと自分の退路を開く。そしてクレメントの指示通りにジャック・イン・ザ・ボックスをシウンの中へと飛び込ませるのだった。
「マリィちゃん、君にこんなことを頼むのも勝手な話だが………」
 どういう表情をしていいのかわからず、静かに唇を噛むマリィにクレメントの声が通信機越しに聞こえる。
「息子を頼む。それから、リカルドさんによろしく言っておいてくれ」
「………はい。お父様には、そう伝えます」
 リトル・ユニコーンとジャック・イン・ザ・ボックスはシウンの囲いを抜けて彼方へと去っていく。研究所の管制が生きていたならばシウンは霧を分けて逃げたヨハンたちを追跡していたであろう。しかし今のシウンは火を使うと言う一点だけを理由にヨハンたちを追跡することはなかった。シウンは全力で自分に対して火を使わない獲物クレメントだけを襲うことにしていた。
 ………すべて計算通りだな。研究所の資料でシウンの詳細を知った時からこうなることはわかっていた。シウンの残量はジャック・イン・ザ・ボックスの火炎放射器一丁ではとうてい敵わないほど多いこと。管制を受けなくなったシウンは火を使わない目標を優先的に狙うということ。この状況はクレメントの想定の範囲を一ミリたりとも越えてはいなかった。
「さぁて、じゃあ仕上げにかかるか」
 クレメントはアイアン・ナイトの中に詰まっている一二五ミリキャノンの砲弾を撫で回しながら呟いた。シウンは完全に展開を終えた様子だった。じわじわゆっくりとアイアン・ナイトに近寄る。
「………天国なんてのが本当にあるのなら」
 アイツに会えるだろうか? そしていつかはヨハンにも………。願わくば天国とやらでヨハンと再会するのが半世紀以上後でありますように。
 クレメントはそう思いながら火炎瓶に火を灯すと、おもむろにそれを振り上げて砲弾にたたきつけた。その衝撃で砲弾の炸薬に火が移り………。
 アイアン・ナイトは一瞬ぶっくりと膨れあがったかと思うと次の瞬間には粉々にはじけ飛んでいた。百発近い砲弾をその内部に搭載していたアイアン・ナイト。その砲弾をすべて一度に破裂させたのだ。その衝撃は並大抵の物ではない。さらにアイアン・ナイトから飛び出した炎の勢いも………。
 さながら地獄の業火のように燃え盛るアイアン・ナイト。アイアン・ナイトを熔かそうと極めて高い濃度で近寄っていたシウンは不意を突かれて回避しそこねた。紅蓮の炎にシウンはそのすべてを焼かれながらこの世界から消えていく。もしもシウンに意識と声があったならば、「信じられない!」とでも叫んでいただろうか。まさか自らの命を捨ててまで自分を倒そうとする人間が存在するなど0と1で表現される機械にはわかるはずがなかった。
 シウンは最後の一欠けらまでアイアン・ナイト爆発の炎によって消滅を強制された。そしてアイアン・ナイトの爆発によって谷の壁面が崩れ落ち、辺り一帯を岩と土砂の下に埋めてしまう。
 二〇年以上モンスターと戦い続けたベテランハンター クレメントの墓標はその岩となった。



 エミーの帰還プログラムによって谷の外で出るように強制されたヨハン。
 ヨハンは信じられないと言う面持ちでリトル・ユニコーンの操縦席で呆けているしかなかった。
 マリィがリトル・ユニコーンの装甲板を叩いて返事するように促す。しかしそれはヨハンの耳には届いていなかった。届くはずがなかった。
 ヨハンは現実感を完全に喪失していた。今日の出来事はすべて夢なのではないだろうか。朝の眩しい光によって目を覚ましてみれば、自分はベッドの上で寝転んでいるのではないだろうか。いや、きっとそうに違いない。そうでなければおかしい………。
 そうしてどれくらいの時間がたっただろうか。リトル・ユニコーンの中で独り膝を抱えて夢の終わりを待ち続けるヨハンに、声が聞こえてきた。その声はヨハンにとってかけがえのない存在、父の物だった。ああ、これでこの悪夢から覚めることができるんだ。ヨハンは安堵に胸を撫で下ろす。しかし不意にヨハンは気付いた。この声は操縦席の下から聞こえてきている。これは一体、どういうことだろうか?
 ヨハンはまさかと思い、操縦席の下に手を伸ばす。そこにはクレメントが常に携帯していたはずのBSコントローラーが隠されていた。このBSコントローラーの画面にクレメントが映り、自分に向けて何か語っているのだった。どうやらタイマー式で、朝になれば再生されるようになっていたらしい。ヨハンは冒頭から再生するように命令した。
「………ぃよぅ、ヨハン。この画面を見ているってことは、俺は死んでるんだろうな。まぁ、それは置いておくとして………。ヨハン、一三歳の誕生日、おめでとう。プレゼントとしてこのBSコントローラーをやる。大事にしろよ」
 あの研究所で撮影したのだろう。画面に映るクレメントは懐中電灯の灯りで自らの顔を照らし出していた。ああ、僕とマリィで地下のメインコンピュータルームを目指していた時か。あの時に撮影したのだろう。つまり、父さんはすでにこうなることを知っていたんだな………。
「ヨハン、お前は真面目な子だから俺が死んだとあっちゃショックで落ち込むだろうが………ま、気にするな。親にとって一番幸せなのは息子の為に死ぬことなんだからさ」
 極めて明るくサッパリとした口調でクレメントはそう言った。
「………来年以降、お前の誕生日を祝ってやれなくなったが、ヨハン。強く、そして大きくなれよ。俺ははるか遠い所からお前のことを見守っているからな」
 クレメントがそう言うと再生が止まった。どうやらこれで終わりらしい。
 ヨハンは初めてここで涙を流した。夢のようだと感じていたが、あれが紛れもない現実であることが他ならぬ父の声で知らされたのだから………。
 だがヨハンは泣いてばかりいるわけにはいかなかった。
「強く、そして大きくなれ」
 その父の言葉を叶えるためにも、ここで泣き続けるわけにはいかない。
 ヨハンはリトル・ユニコーンのハッチを開くとマリィの前にその姿を現した。ヨハンは溢れる涙を拭うこともなく、マリィに言った。
「………マリィ、父さんは死んじゃった。ベテランハンターだった父さんは死んじゃった」
「………ヨハン」
「これからは僕とマリィの二人で旅することになる。きっと僕じゃ父さんのようにできない。頼りにならないと思う。こんな僕でも………いいかい?」
「………私に選ぶ権利なんてないと思うの、ヨハン」
 マリィは自分の胸に手を添えて言った。
「私はヨハンのように戦えない。ただ少しだけ機械をいじれるだけ。私こそヨハンにとって荷物になると思うわ」
「………一緒に、行こう」
「ええ………」
 互いに未熟であると自覚する少年と少女は、失った者の大きさに震えながらも旅を続ける事を確認しあったのだった。
 そんな自分たちを見てクレメントは「はるか遠い所」で微笑んでいることだろう。「青春してるねぇ」と半分からかいながら、そしてもう半分で息子たちの自立を祝しながら。


次回予告

 ………別れがあれば出会いがある。それはまるでコインの裏表のような関係。
 人生てのはそういった表裏の繰り返しで紡がれていくものさ。
 さて、いよいよ真打ちのご登場だ。ヨハン、よろしく頼むぜ。

次回、「パイルドライバー・ビリー」


第六話「夢のそばに」

第八話「パイルドライバー・ビリー」

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