天井から吊り下げられている監視カメラ。
 その無感情なレンズに姿を捉われた者は例外なく侵入者として見なされる。そして侵入者に対しては床下からバルカンホールという完全自立型多銃身機関銃座が鉛弾を喰らわせる。
「クソッタレが!」
 表面に分厚い鉄板を溶接したオフィスデスクを、ドンと前面に張りたててバルカンホールの銃弾を防ぐ盾にしたのは究極求道者アルティメットクエスターのマグナムだった。生物の遺伝子を強化改造するという、文明の負の部分によって生み出されたミュートと呼ばれる亜人類のマグナムにとって、鉄板を張り合わせたオフィスデスクの重さは気にもならない。
 ドボボボボボボッ!
 切れ間が聞き取れないほどの連続した銃声。七.六二ミリの銃弾がオフィスデスクに張り合わされた鉄板に弾かれる。一弾倉にこめられた全銃弾を撃ちつくしたバルカンホールは、ガキンと音をたてて弾倉を交換しようとする。そしてそれがマグナムたちの狙っていた好機だった!
「今よ、ハヤト!」
「OK!」
 バリケードの影に隠れていたハヤトとウルリーカが手榴弾を投げつける。バルカンホールのすぐ近くに二つの手榴弾が放り込まれ………
「ふん!」
 手榴弾に向けて熱線砲、グレイボンバーの引き金を引いたのは究極求道者アルティメットクエスターのヘッシュであった。グレイボンバーの銃口から放たれた火球は二つの手榴弾を誘爆させる!
 ドゥンッ!!
 一際大きな爆発音と衝撃。バルカンホールは軸をへし折られて無残な残骸と変わり果てる。マグナムがバルカンホールの残骸に近寄っていき、まだ熱くなっている銃身を踏み折った。
「ケッ、忌々しいセキュリティどもだぜ」
「しっかし物騒なビルね、ここ」
 ウルリーカがクルリと後ろを振り返る。わずか四〇メートルにも満たない通路にも関わらず、バルカンホールの残骸は両手の指では数え切れないほど存在していた。
「さながら食人建築といったところだな」
 ヘッシュの言葉に若干の疲労が見え隠れしている。すでにこのビルディングに入って数時間、ほぼ休むことなく戦い続けるというのはさしもの究極求道者アルティメットクエスターにとっても楽な話ではなかった。
「はぁ〜、オレお腹空いてきちゃったよ………」
 ハヤトがため息をつきながら地面にへたり込む。
 しかしハヤトたちの目の前の床がパカッと開き、床の下から新しいバルカンホールが姿を現す!
「オラ、立て! 休んでる暇はないぞ!!」
 マグナムが愛用の二丁レーザー拳銃、グレイブラスターを左右両方の手に構え、ハヤトの尻を軽く蹴飛ばす。
 ツルノスのハヤトとウルリーカ、究極求道者アルティメットクエスターのマグナムとヘッシュ。かつて激戦を繰り広げた者同士が協力しあっているのには勿論理由がある。
 その理由の発端は、今から三時間ほど前に戻るのだ………。

メタルマックス外伝
我が求めるは黄金郷

My Request El’DORADO
九話「呉越同舟! アルティメット・ツルノスー」


「は〜、まったくひどい目にあったものだわ」
 ツルノスの商品輸送用トラックの開いた窓から流れ込む風がウルリーカの紅い髪を撫ぜる。
 ツルノスの一行はセボの軍港で念願の新戦車を発見したものの、セボの軍港を根城にするヤマトノオロチに追い回されて戦車を持ち帰ることができなかった。要するに骨折り損のくたびれ儲けというやつだった。
「僕もクタクタですよ」
 トラックの座席に身を預け、疲れきった四肢を投げ出しているのはニモだった。結局、ニモが数時間で作り上げた無人戦車大隊プログラムはヤマトノオロチには通用せず、ニモの苦労は徒労に終わってしまったのだ。「もうどうにでもな〜れ」とばかりにだらけきっていたとして、誰がニモを非難できようか。
「お嬢、右の方に何かの跡地がありますよ」
 トラックのハンドルを握り、アクセルに足を置くグレイゴがサイドミラーに映る廃屋に目を向ける。
「とりあえずそこで少し休みましょう」
 グレイゴの言葉に反対する者も、反対する理由もツルノスにはなかった。
 グレイゴは廃屋の方へトラックを向け、アクセルを踏む力を強める。トラックの心臓であるエンジンは力強く唸り、濁った排ガスを吐き出す。エンジンが生み出したエネルギーは車輪をさらに早く回転させてトラックを前進させていく。
 もしもここでツルノスが廃屋ではなく、廃屋に続く道に注目していたなら、二組の足跡を見つけることができたはずだった。もっともその足跡をツルノスが発見できていたとしても、その意味を正確に把握できるはずはなかったのだが………。
 ………そして廃屋に辿り着いたツルノスはアスファルトが所々残った広場にトラックを停める。
「それにしてもここ、大破壊の前は何だったのかな?」
 廃墟の周囲を歩くハヤトがウルリーカに尋ねる。
「いわゆるサービスエリア、というもののようね」
「さーびすえりあ?」
「アタシも詳しくは知らないけど、大破壊が起きる前には高速道路っていうクルマのスピード出し放題の道があって、サービスエリアってとこで休憩とかしてたらしいわよ。でも高速道路って、アタシのメルクール号みたいなスピード特化の軽戦車ならいいけど、重戦車系のクルマ乗ってた人は高速道路で邪魔にならなかったのかしら………」
「ふーん………」
「ま、とりあえずこの辺りはモンスターもいないみたいだし、今日はここで野宿かしらねぇ」
 サービスエリアの廃墟周辺に敵となりそうなモンスターが存在しないことを確認した二人は駐車場だった広場に停車させたトラックへと戻る。そこで二人はトラックの座席に背を預けて静かな寝息をたてるグレイゴとニモを見つけた。
「ありゃ、ニモ寝てるや」
「グレイゴも寝てるわね。ま、グレイゴは運転で、ニモはセボでだいぶ頑張ったんだし、このまま寝かせておいてあげましょう」
 ウルリーカはそう言うと再び廃屋の方へ歩き出す。
「さ、ハヤト。何か使えそうなものがないか、建物の中を調べましょう」
 廃屋に見えた建物は、外見通りの内装であった。埃が積もった床に、ガラスが砕けたショーケース、乱暴にこじ開けられた自動販売機。はるか昔の大破壊から手付かずのままだった、土産の食料品は、食料であった面影が見えないほどに朽ちていた。
「………こりゃ使えそうなものなんか無さそうね」
 床に散らばったガラスの破片をウルリーカのあんぜんぐつがパキッと踏み砕く。
 椅子が倒れ、主を失くして幾年月の机を調べていたハヤトが声をかける。
「ウリちゃーん、このパソコンまだ使えるよ」
 ハヤトは文字が読めないのでウルリーカが電源が入ったままになっているパソコンのディスプレイを覗き込む。
「どれどれ、『戦車が欲しい者はここに集まれ』………って、ええ!?」
 ディスプレイに映っていたのは「戦車がここにある」というメッセージと、この廃墟からさほど遠くない場所の地図であった。
「へー、そこに戦車があるんだ。じゃあ行ってみようよ」
 頭の後ろに両手を回し、気楽な声色でハヤトがいう。しかしウルリーカは胸元で腕を組んで右親指の爪を噛みながら考えをめぐらせる。
「何だかうまい話にしても度がすぎるわね………。ホントに戦車があるのかしら? それにアタシたちがこのメッセージを見つけた第一号とも思えないし………」
「じゃあ行くのやめる?」
(………でもホントに戦車があった場合のことを考えると、やっぱ行くべきよね。………うん、先にアタシとハヤトで様子を見に行って、誰かが手をつけている風だったら諦めればいいか)
「?」
「よっし、ハヤト、その地図の場所に行ってみるわよ。虎穴に入らば龍虎乱舞よ」
「何それ?」と言いたげなハヤトを連れてウルリーカはパソコンのディスプレイに映った地図が示す場所に向かうことにしたのだった。



 むき出しになった土にわずかにアスファルトの断片がかぶさった荒野の中にポツンとそびえるビルディング。錆びた金属のプレートには「神話警備保障」の文字が刻まれていた。
「さて、地図に載ってたのはここね………」
 ウルリーカが見たところ建物は古びているものの、十分原型を保っていた。大破壊による廃墟がそこかしこに見受けられるこのクシュウにおいて、このビルディングは非常に稀有な存在であった。
「ウリちゃん、こっちにクルマが通れそうな坂があるよ!」
 ハヤトがウルリーカを手招きした先にはビルの地下へ続くスロープがあった。その道幅と高さは戦車であっても十分通行が可能なほどに余裕があった。そしてスロープの先には分厚いシャッターが降りており、スロープから直接ビルの中に入ることはできないようだった。
 シャッターを軽く小突くウルリーカ。そのシャッターは手持ちの装備では破壊できそうになかった。
「こりゃ、ひょっとしなくてもクルマがありそうね」
「グッさんたち呼んでくる?」
「そうね。ここは一つ腰を入れて探索した方が………」
 そこまで言った時、ハヤトがおもむろにウルリーカの平たい胸に手を伸ばし………そして色気もなく思い切り突き飛ばした。
「キャッ!?」
 尻餅をついたウルリーカの戸惑いの声は銃声でかき消された。ウルリーカが立っていた場所、ハヤトに突き倒される前にいた場所に七.六二ミリの驟雨が突き刺さる。
「なッ、何事!?」
 ウルリーカが肩に提げていたステアーAUGを構えるより早く、ハヤトがVz61スコーピオンの引き金を引いていた。
 途切れを感じさせないほどに連打される銃声。放たれた.32ACP弾が地下へ続くスロープから生えたバルカンホールの支柱の基部を撃ち砕く。支柱の支えを失ったバルカンホールは発砲を止め、ガシャンと大きな音を立てて崩れた。
「バルカンホール? まさかこのビルのセキュリティがまだ生きているっていうの………?」
 残骸になったバルカンホール。その唐突な出現に驚きを隠せないウルリーカ。しかし状況はウルリーカに戸惑う暇も与えようとしなかった。
「ウリちゃん、アレ!!」
 ハヤトが指差す先、地下と地上を区切る天井からぶら下がる監視カメラのレンズが二人を見据え、そして床からはスネークホールが三つも現れる!
「ちょっと、冗談じゃ………」
 監視カメラが狙いを定め、スネークホールが三条の光線を放つ!
 ハヤトは光線を床を蹴って跳んで逃れ、ウルリーカは床に伏せてかわす。
「冗談じゃないわよ!!」
 ウルリーカのステアーAUGが吼え猛る。ステアーAUGが吐き出した銃弾の一発が監視カメラのレンズを砕き、目を失ったスネークホールは狙いが定まらなくなる。
「えぇい、逃げるわよ、ハヤト!」
 スネークホールがこちらを見失ったことを幸いにウルリーカが走り出す。しかし天井から二基目の監視カメラが現れ、視界を取り戻したスネークホールが再びウルリーカたちを追いかける。スネークホールが放つレーザーを回避するだけで手一杯になり、逃げることが叶わない状況であった。
「ウリちゃん、シャッターが!」
 堅牢な要塞の正門のように分厚く、そして重く閉ざされていたシャッター。それがゆっくりと音を立てて巻き上がり始めていることにハヤトが気付く。この地下へ続くスロープから地上に逃れることができないのなら、あえてシャッターの中へ侵入するべきか。ツルノスのリーダーであるウルリーカの決断は早かった。
「ハヤト、滑り込むわよ!」
 スネークホールの攻撃をかわしながら、ウルリーカとハヤトは女子供の胴体サイズにしか開いていないシャッターめがけて駆け出し、そしてスライディングでその隙間へ突っ込んでいく。床を滑りながら天井を仰ぐウルリーカの視界に厚さ数十センチにも達するシャッターが迫り………そしてウルリーカの体に触れることなく過ぎ去っていった。
 ウルリーカとハヤトがシャッターをくぐることを待っていたかのように、シャッターは再び閉じられる。
「………シャッターがまた閉じた?」
 シャッターが閉鎖されたことで光源失った閉ざされた地下空間。しかしツルノスの侵入がスイッチだったのか、天井の照明が一斉に光を放ち始めた。
「!? ………?」
 急な襲撃とそれから逃れるための侵入。何者かの明確な意思を感じざるをえない状況の連続にさすがに違和感を覚えるウルリーカ。しかしハヤトは気楽に灯りがついたことを喜んでいた。
(………ま、深く考えてもしょうがないか。誰かがアタシたちをハメようと考えているなら、その罠ごと粉砕してやるまでよ)
 覚悟を決めたウルリーカは考えることをやめ、落ち着いて周囲を見渡す。コンクリートで覆われた地下空間は駐車場として使われていたスペースのようだった。所々に白いペンキで描かれた線と数字が見える。
 駐車場にクルマは何台か停まっているが、銃弾を浴びすぎてボロボロになっているか、ガソリンタンクが爆発炎上して黒く焦げているか、要は廃車ばかりであった。
「これじゃ使い物にならないものばかりね。ざぁんねん」
 肩をすくめてため息を吐くウルリーカ。彼女の言葉に対して聞き覚えのない声が響いた。
『ようこそ神話警備保障の最新モデルルームへ。私はマイソロジーと申します』
 声がする方へ振り返る二人。そこにはスピーカーを両脇に挟んだ液晶モニターがあり、デフォルメされた人間が映っていた。
「神話、警備保障?」
『はい。神話警備保障は神話コーポレーショングループの一員で、貴方のご自宅の安全を護る為、日夜貴方を見守る暮らしのガードマンです』
 神話コーポレーション………確かCユニットに99式神話があったわね。それを造っていた会社かしら?
「まぁ、いいわ。で、ここは『モデルルーム』ですって?」
『はい。神話コーポレーションの最新技術を投入した、確固たる安全のある生活を体験していただき、あわよくばお客様にご契約していただきたく………おおっと、それは言わない方が華でしたかな』
 モニターに映るデフォルメ人間の顔がアップになり、そして黒い笑顔を浮かべている。愛想で笑ってやってもよかったが、しかしバルカンホールやスネークホールに襲われた後だと笑う気になれない。
「そういえばアタシたちの話に受け答えしてるわね、アナタ」
『ええ、私は録音されたテープではございません。神話コーポレーションが誇る技術の一端をお見せするため、私が生み出されているのです』
「それはご苦労なこと………じゃあ、一つお聞きしたいことがあるんだけどよろしいかしら?」
『ええ、何でもお尋ねください』
「この建物に戦車はあるかしら?」
『ええ、ありますよ。神話コーポレーションが誇る最新鋭暴徒鎮圧用車両、九六式が特別展示されております』
「そう。それはよいことを聞いたわ」
『おや、お客様も九六式をお求めでしたか』
「『も』? 今、アナタ、『も』って言ったわね?」
『最近多いんですよ。九六式をお求めになるお客様が。ですがご安心を、まだ九六式の在庫はございますよ』
 再びニコリと微笑むモニターの中のデフォルメ人間、マイソロジー。
「………そう。それはよいことを聞いたわ」
 ウルリーカはそう言うとマイソロジーに背を向けて、ハヤトと共に駐車場から上の階へ向かって歩き始めた。マイソロジーがウルリーカたちの背中に告げる。
『神話警備保障最新の防衛システムを是非ご堪能ください』



 駐車場から階段で一階に上がったツルノスは早速戦車を探して動き始めていた。いや、最初に行うべきはこのビルから出てグレイゴやニモと合流することだったのだが、しかしこのビルの入り口も駐車場と同じく分厚い装甲シャッターによって閉鎖されているため脱出は不可能であった。
「シャッターは九六式とかいう戦車の主砲で吹っ飛ばしてやりましょう」とはウルリーカの弁であった。
 しかし不気味なまでに生き物の気配を感じないビルだ。ハヤトは強力な腕力だけでなく、周囲の気配を感知することにも自信がある。こういう廃ビルではネズミやゴキブリといった悪環境でも生存できるタフな生物が必ずいて、その存在を感知するものだ。しかしこのビルではその気配が一度も感じることはできなかった。
「まただわ」
「え? どうしたの、ウリちゃん?」
「ハヤト、アレを見てよ」
 ウルリーカが指差す先にはバルカンホールと監視カメラの残骸が転がっていた。しかもその残骸は強烈な熱を受けたのか、鋼鉄の部品がチョコレートのように溶けかけていた。
「どうやら私たちより先に来た誰かさんがハデにアバレたみたいね」
「先に来てる人いるのか。戦車、まだあるのかな………」
 ハヤトがそう呟いた時、ハヤトは二人分の足音を感知していた。ウルリーカの袖を引き、そっと耳打ちする。
(ウリちゃん、誰かがこっちに近づいてきてる)
(え………)
 ウルリーカがそっと目を閉じ、聴覚に意識を集中する。………確かにわずかだが足音が、確かにこちらへ近づき大きくなってきていた。
 ゴクリ………。一体何者がこのビルにいるのだろう。ステアーAUGを構える手に汗が滲む。
 そして足音が二人のすぐ傍に迫り、二人は先客とあいまみえる。
 ガッシリとした筋骨隆々の肉体、そびえる程の長身。普通ならば外見上の特徴で真っ先に上がってもおかしくない要素だが、ツルノスと遭遇した男たちの外見で目を引く最大の特徴は顔面にあった。獅子頭と虎頭、人間のものではない猛獣の頭部を持つ亜人類、ミュートと呼ばれる男たちがツルノスに遭遇したのであった。
究極求道者アルティメットクエスター!!」
 ウルリーカの声が耳に届くよりも早く、ハヤトが稲妻のように銃を抜く。ハヤトに負けず劣らず、獅子の頭を持つ青年が四本の指をそろえた貫手を風よりも速く突き出す!
 体を翻したハヤトに貫手は命中せず、コンクリートの壁に深く突き刺さるだけだった。………いや、それだけではない。貫手を突き出した方とは逆の手がレーザー拳銃、グレイブラスターの銃口をハヤトに突きつけていた。
 だがハヤトが抜いたVz61スコーピオンの銃口は獅子頭のミュート、マグナムの頭、特に眼を狙っていた。Vz61スコーピオンの銃弾がマグナムの肉体に通用しないことは前回の戦いで判明している。しかし筋肉ほど硬く鍛えることができない目玉ならばVz61スコーピオンでも射抜けるはずだった。
 もしもハヤトとマグナムのどちらか、あるいは両方が相手に対する殺意を明確にした場合、即座に相撃ちが発生するだろう。ハヤトとマグナムの疾風迅雷の行動の結果はメキシカン・スタンドオフと呼ばれる千日手を生み出していた。
「チッ、やるな、クソガキ」
 ニヤリと口元を歪めるマグナム。ハヤトもニコリと微笑み、子供とミュートはお互いに武器を降ろしてのメキシカン・スタンドオフを解除する。
「しかし私たち以外にも何者かがこのビルに入ってきたと思ったが、まさかお前たちだったとはな、ツルノス………」
 マグナムの行動を腕を組んだまま眺めていた虎頭のミュート、ヘッシュがポツリと呟いた。
「それはアタシたちの台詞よ。ミュートの領土はクシュウの南半分じゃなかったの?」
「ハッ、そんな他人が決めたルールにオレ様たちが従うはずねぇだろうが!」
「とはいえそのルールを破ったからこそ私たちはお尋ね者として賞金がかけられている………。ここで決着をつけるか、ツルノスよ?」
 ヘッシュの挑発にウルリーカは乗らなかった。ウルリーカは肩をすくめて首を振る。
「まっさか。こんな得体の知れないビルに閉じ込められてるってのに、アンタたちとケンカしたって共倒れがオチよ。ここは一つ協力して脱出の方法を探るべきだとアタシは思うわね」
「ふっ、以前に捕まえた時はけたたましい女だと思っていたが、なかなか冷静な判断もできたのだな………」
「ところでお前ら、以前戦った時にいたオッサンとロリ子はどうしたんだ。まさかくたばったか?」
 オッサン………まだ二五歳なのにオッサン呼ばわりとは憐れね、グレイゴ。ま、ニモの性別の件も含めて話をややこしくするのもなんだし、ツッコミはなしにしましょうか。
「失敬なこと言わないで。あの二人はこの先にあるサービスエリアで待機してるわよ」
「何だよ、あのロリ子のハッキングでシャッター開けてもらえれば楽だったのに………」
 腰に手を置いて天井を仰ぐマグナム。しかし無い物ねだりをする趣味は彼にはなかった。
「まぁ、仕方ない。とりあえずここは共同戦線といこうぜ」
 マグナムが腰のホルスターから二丁のグレイブラスターを抜き、手の中でクルクルと回転させる。ツルノスたちにも異存はなかった。
 こうしてかつての敵同士は手を組み、神話警備保障が誇る最新鋭セキュリティシステムに対する戦闘を開始したのであった。


次回予告

マグナム「オラオラオラァ! オレ様のお通りだッ!!」
ハヤト「お通りだーッ!!」
??????「やれやれ、困ったお客様だ。これは警戒レベルを最大値にするしかなさそうですね………」
ヘッシュ「む、あれがこのビルの警備を司る警備ロボのようだな」
ウルリーカ「アタシたちを閉じ込めた報い、受けてもらうからね!!」

メタルマックス外伝
我が求めるは黄金郷

第一〇話「恐怖! 食人建築の真相」

グレイゴ「ありゃ? お嬢たち、どこ行ったんだ?」


第八話「海獣大決戦! ランドパワーVSシーパワー」

第一〇話「恐怖! 食人建築の真相」

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