「ゲッ、三万ゴールド………ッ!?」
大樹海の手前で栄える町、クルメル。
ニモの活躍で
しかし
「そりゃここまでぶっ壊されてるんだぜ、これくらいは当たり前だと思うがね」
クルメルの修理屋は当然の見積もり金額だと椅子にふんぞり返る。
「お嬢、こればかりはしょうがないと思いますよ」
ツルノスの良心と自他共に認めるグレイゴはそっとウルリーカに耳打ちした。ウルリーカは鼻息荒く返す。
「わかってるわよ、それくらい。でも、三万ゴールドの出費は痛いわねぇ………。誰か親が修理屋とか、助けた恩人が修理屋とかやってないのかしら」
「リオラドに親戚はいないし、マドには行ったこともないですがな」
グレイゴは肩をすくめながら修理屋に三万ゴールドを手渡す。現金を前にした修理屋は、先ほどまでのふてぶてしさがウソのような笑みで言った。
「毎度ありー」
「やっぱり軽戦車のメルクール号じゃダメね」
クルメルの酒場で昼食を頼み、食事が運ばれてくるまでの合間にウルリーカがしみじみと呟いた。
「確かにメルクール号じゃ
シレイラと名乗った女にもらったノートPCの表面を撫でながらニモが頷いた。
ニモの物となったノートPCは、ニモが
両腕を組んで酒場の天井を見上げるグレイゴから大きなため息が漏れる。
「メルクール号は軽戦車とはいえ、大したエンジンを積んでいるわけじゃない。限られた積載量と乏しい防御を補うために考えられる限りの火力を搭載したつもりでしたが………」
つまり殺られる前に殺る。大口径砲による遠距離からの砲撃、アウトレンジこそがメルクール号の戦術思想であった。
しかし
「やっぱり一点豪華主義ってのも限界があったのかしら」
椅子の背もたれに体重を預けて天井を仰ぐウルリーカ。
「攻守走の三拍子を揃える必要があるってことですか?」
「いや、攻守走のバランスを整えるだけでは意味がないな。身も蓋もなく言えば、攻撃力も守備力も素早さも、すべての性能が並外れていないと
「はぁ、確かに身も蓋もない話よね。あ〜あ、どっかに最強の戦車でも埋まってないかしら」
ウルリーカとグレイゴ、ニモの三人の話が進む中、大人しく椅子に腰掛け続けていたハヤトだったが、彼の注文した肝ニラ炒めが運ばれてくるや緊張感のない表情で舌鼓を打ち始めた。
「うめ〜!」
ハヤトの食事風景を見せられてマジメな話が続くはずもなく、三人は自分の注文した料理をそれぞれ受け取って昼食を開始する。
…………………
「ねぇ、マスター、何かここらで戦車の噂とかないの? できるだけ強力で、できるだけ整備が行き届いてて、できるだけ簡単に手に入る戦車の情報とかあると嬉しいんだけど」
ぬめぬめ細胞のとろみが美味しいアメーバカレーの辛さに少し顔をしかめながらウルリーカが酒場の店長に尋ねた。酒場の店長は無表情のままグラスを布で磨いていたが、少しの間を空けてから口を開いた。
「さぁ、知らんな。だいたい、この町でずっと暮らしてきた私と、世界を旅して回るお前たち、どっちが情報に詳しいかはわかるだろう?」
「もしかしたら、と思ったんだけど、世の中そう上手くはいかないか」
椅子の背もたれに身を預けて天井を仰ぐ少女の聴覚が聞き覚えのある音楽を捉える。酒場の片隅に置かれたジュークボックスの、古めかしいスピーカーから流れる音楽は大破壊以前の流行歌のインストゥルメンタルらしいが、もはや歌える者が失われて久しい曲だ。スピーカーからこぼれる割れかけた音がウルリーカの記憶という名の引き出しの鍵を解き放つ。
………あの頃、まだ
「おや、グレイゴ………? グレイゴじゃないか!? じゃあそっちは………」
ウルリーカを回想から現実に引き戻したのは一人の男の声だった。ウルリーカはキッと険しい表情を見せ、声の方へスプーンを投げつける。
男は左手を振ってウルリーカの投げたスプーンを払いのける。酒場の木の床に落ちたスプーンが響く。
「相変わらずのお転婆娘だな、お嬢さん」
ニモの見たところ、二〇代後半と思われる男はスラリと伸びた長身と肉付きの薄い痩身が外見の特徴だった。………いや、よく見れば右手の薬指と中指が失われている。
ウルリーカが刺し殺すような眼差しを向けられる男。一触即発の雰囲気を変えようとしたのはグレイゴだった。
「兄さん、久しぶりだな」
「グレイゴ!」
そんな奴と話をするなと言わんばかりの怒声、無関係のハヤトとニモが思わず身を縮めるほどの声を受けてもグレイゴはケロリとしていた。
「お嬢、ここは酒場です。ケンカをする場所ではありません」
グレイゴはそういうとウルリーカの腕をつかんで強引に店から出て行く。ニモとハヤトはグレイゴが置いていった財布で清算をしてから慌ててグレイゴたちの後を追った。
「一体、あの人は何者なんですか?」
ツルノスのトラックに戻るや、ニモがグレイゴに尋ねた。疑問をぶつけられた側は、ツルノスのリーダーの眼を伺ってから応えた。
「酒場でも言ったが、彼は私の兄、テイラーだ」
「でも、何でウリちゃんと仲が悪そうなんだ?」
「フン、裏切り者と仲良くできるはずないでしょ」
そっぽを向いてツーンと言い切るウルリーカ。グレイゴはウルリーカの逆鱗を刺激しないよう、慎重な口調で続ける。
「………このツルノスは、元々は何台ものトラックを有する一大トレーダーだったって話はしたよな?」
「ええ。でも
「ああ。だが、俺とお嬢以外にも生存者はいた。兄さんも生存者の一人なんだ」
「だけどアイツはアタシが主張した仇討ちに参加しなかった」
「………兄さんはツルノスのナンバー2でもあったんだ。兄さんが仇討ちに参加せず、新しくトレーダーを立ち上げることを決めた時、ツルノスの生存者のほとんどはそれについていくことを決めた」
「アタシのパパに散々世話になっておきながら、パパの仇を討とうともしない。アイツはどうしようもない卑怯者なのよ!」
どうやらテイラーの話はウルリーカにとって禁句らしい。青い眼を真っ赤に血走らせるウルリーカの剣幕を見れば、ハヤトでもそれはうかがい知れた。
「しかし兄さんがこの町に来たとはな。メルクール号の修理費用のいくらかをここで取り戻しておきたかったんだが………」
「ム、グレイゴ、それどういう意味よ」
「どういう意味って………兄さんのトレーダーは今やトラック数台を保有する大団体ですよ。ここで商売勝負を吹っかけても得はありません」
グレイゴの正論に噛み付きそうな眼で睨みつけるウルリーカ。しかしグレイゴはウルリーカの眼光で怯むほど臆病ではなかった。
二人を横目にハヤトがニモを肘で突付く。
「なぁ、ニモ。どうしてオレたちの方が不利なんだ?」
「え? そりゃあ、たとえば僕たちが回復カプセル一〇個を四〇Gで売ろうとしたとします」
「うんうん」
「でもテイラーさんのトレーダーは一一個を四〇Gで売るようにしたら、ハヤトくんはどちらが売れると思いますか?」
「そりゃ一個多い方だけど………それやったら損しないの?」
「そこでトレーダーとしての規模が関係します。僕たちが持てる回復カプセルの量より、テイラーさんたちは何倍も多く持てるので、一個辺りで損していたとしても、全部売り切れば十分得することになるんです」
「ま、ニモの説明をエラそうな言葉でいうなら『薄利多売』だな。お嬢、ここは口惜しいかもしれませんが、兄さんたちと無理に争う必要はありませんよ」
グレイゴはそういって再度ウルリーカに翻意を迫る。
「商売の基本は、どうしても欲しがっている人を探して高く売りつけるですよ、お嬢」
「むむむ………って、そうよ、欲しがっている人を見つければいいんじゃない! テイラーの所より高い値段でも買いたがるような、付加価値をつけて!!」
ウルリーカはそういって手をパンと叩いた。グレイゴは右人差し指でこめかみを二度叩いてから尋ねた。
「………付加価値といいますと?」
「そりゃ『かわいい子』が売ってくれることに決まってるじゃない」
そう言って媚びたポーズを取るお嬢。
「『かわいい』………」
「『子』………?」
しかしグレイゴとハヤトが見やったのは精一杯のかわゆいポーズを示す少女ではなく、もう一人の「男の子」であった。
「………ッ!」
グレイゴとハヤトの反応にさすがに傷ついたウルリーカはガックリと肩を落としてしまう。この様子ならテイラーのトレーダーと商売勝負をするとは言い続けないだろう。
そしてニモのある種悲痛な叫びが辺りに響いたのだった。
「あの、僕は男の子ですから!!」
蛍光灯の白い光が窓一つない部屋に明かりを提供している。
所々にひびが入っているコンクリート製の壁をぼんやりと眺めながら、一人の女性がけだるそうにパイプ椅子に腰掛けていた。
女性は退屈そうに机の上からタバコの箱を取り出した。几帳面さとは縁が薄い女性の机の上は紙くずと、ゴミと見分けのつかない書類が繁雑に散らばっていた。
雪のような白い肌にはえる真っ赤な口紅。印象的な紅がタバコの吸い口に塗られる。
「………ふぅー」
艶やかな紅茶色の髪を面倒くさそうにかきあげながら女性は紫煙を吐き出した。
「随分と、退屈そうだな?」
見るからに退屈そうな女性をからかう声が響いたかと思うと部屋を閉ざしていた扉が空けられる。開いたドアから入ってきたのは最強の名を欲しいままにするお尋ね者であった。
女性は皮肉めいた口調で応えた。
「そりゃあ、アナタのように好き勝手に外を出歩ければ退屈しないですむでしょうに」
アーバインは少しムッとした表情で反論しようとする。
「シレイラ、我々は………」
しかしシレイラと呼ばれた女性がアーバインの声を遮る。
「ええ、わかっているわよ、アーバイン。ワタシたちにできるのは待つことだけだってのはね」
「そうだ。我々は、『その時』が来るのを待つしかない」
シレイラがアーバインに取られたタバコを奪い返して最後まで吸いきる。
「でもね、アーバイン。ワタシ、『あの子』たちならやってくれると思うの」
シレイラが吸いきったタバコの灰が飾り気のないタイル床にこぼれて鈍い赤を残す。
「そうだ、シレイラ。『あの子』たちのことで話がある」
「あら、何かしら?」
「バレないとでも思ったのか? 『あの子』にノートPCを与えた話だ」
「ああ、もしかしてワタシが渡したノートPCに
「違うのか?」
「違うわ。渡したノートPCは何のソフトも入れてなかった。
「何………!?」
声に緊張の色をにじませるアーバイン。それに対してシレイラは妖艶に微笑んだ。
「だから言ったでしょう、アーバイン。『あの子』たちならやってくれると思うの、ワタシは」
シレイラはタバコの箱からもう一本取り出すと、口に咥えながら続けた。
「………ワタシたちの悲願、人類の悲願はもうじき叶う。この退屈極まりなかった停滞の時間も、もうすぐ終わるわ」
「そう、だな………」
アーバインは天井を仰ぎ見ながら言葉を噛み締める。
この窓一つ作ることができなかった地下世界に潜ってどれほどの時間が経過しただろう………? 我々の悲願が成就する。その時が近づいてきている。
それは予感ではなく、実感なのだ。これほど嬉しいことはない。
太陽が地平線の彼方へ落ち、空が黒い幕と星の煌きに支配された頃。
グレイゴが独りでクルメルの酒場へと足を運んだ。
「遅かったな、グレイゴ」
そう広くもない酒場の端にあるテーブルでグレイゴの姿を見つけた兄、テイラーが声をかけた。テーブルの上にはロケットピンガのボトルとつまみの焼きアメーバの皿が置かれていた。酒を注ぐグラスは二つ用意されている。
「お嬢たちを撒くのに時間がかかってしまってね。………ロケットピンガのボトルか。兄さんのトレーダーの景気はいいみたいだね?」
グラス一杯で二四Gもする高級酒をボトルキープするテイラー。弟は兄の景気のよさを素直に祝した。
「何、コイツはお前と再会できた記念だ。いつもコイツを飲んでるわけじゃないさ」
テイラーはそういうと慣れた手つきでロケットピンガの栓を開ける。そして弟のグラスに注ぎ、次いで自分のグラスに注ぐ。薄い琥珀色した液体が波打つことをやめるのを待ってから、テイラーはグラスを手に取った。グレイゴもそれにならい、兄のグラスにカチンと合わせた。
「兄弟の再会に」
「そして我らがお嬢さんの武勲に」
ゴクリ。二人の男がロケットピンガを一気に飲み干す。
「聞いたよ。
四〇度以上のアルコールをストレートで飲みながら、しかし兄弟の口調と思考は一切の乱れが無かった。
「戦って、やられはしなかったが………しかし厳しい戦いだった。ハヤトとニモ、昼間に兄さんと会った時にいた子供たち、あの子たちがいなければ確実にやられていたよ」
兄のグラスにおかわりを注ぎながらグレイゴが言った。
「あの子供が?」
弟のついだ酒を一口、舐めるように飲む。
「ああ、ハヤトもニモも、二人ともめきめき強くなっていく。あの子たちはうちの大切な仲間だよ」
「そうか」
テイラーが満足げに頷きながら弟のグラスに追加を注ぐ。
「………ところでグレイゴ、HuRRyと呼ばれる組織を知っているか?」
テイラーが真剣な眼差しで不意に尋ねた。
「ハリー? いや、聞いたことないな」
「『Human Race Reproduction company』、略してHuRRy。和訳するなら、人類再生部隊といった所か」
兄のグラスが空になったことに気付いたグレイゴが薄い琥珀色を注ぎながら疑問を口にする。
「人類再生部隊? 一体、何を再生するっていうんだ?」
「詳しいことは俺にもわからん」
グラスを口の方へ傾けながらテイラーは続ける。
「だが、俺が
「………
グレイゴがグラスを置いて、視線を向ける。伏せた眼の先でロケットピンガがわずかに波打った。
「兄さん、やはり兄さんも俺たちと一緒に来るべきだ」
ロケットピンガの波が見えなくなった時、グレイゴが意を決して口を開いた。グレイゴの決意を、兄は眉一つ動かさずに聞いていた。
「お嬢は兄さんを裏切ったと思い込んでいるが、兄さんはツルノスの生存者を復讐に巻き込まないために離れていったんだろ? お嬢にそれを伝えればわかってくれるよ」
そう、テイラーは確かにツルノスの生存者を連れてウルリーカたちの許を離れていった。
しかしそれには理由がある。もちろん、臆病風に吹かれたとか、卑怯とか後ろ指を指されるような理由ではない。
今でこそ武装トレーダーとしてモンスターとの戦闘までこなすツルノスであるが、
それゆえに商才はあっても戦いの才能を持たない者も多くいた。いや、ウルリーカとグレイゴ、そしてテイラーを除いた全員がそうだったといっていい。そして例外を除いた大半の者は
テイラーがツルノスを出て行くことを決めたのはそれがあったからだ。
ツルノスのナンバー2であるテイラーがツルノスを出て行くと言い出した時、ツルノスの生存者の大半はチャンスだと考えた。ナンバー2ほどの男が参加しないという仇討ち、自分たちが参加する理由はない、と。
テイラーは自分の名誉と引き換えに、ツルノスの内紛を未然に防いでいたのだった。グレイゴがそのことに気付いたのはテイラーが出て行って少し経ってからのことだった。
「お前がそのことを俺にいったのはもう何度目だ? そろそろ諦めたらどうだ?」
しかしテイラーは首を縦に振らなかった。
「………グレイゴ、HuRRyと呼ばれる組織の影が見え始めてきた以上、やはり俺は別行動をとる。俺は戦闘ではなく、情報面でお嬢さんを支えるさ」
「兄さん。しかしそれでは兄さんに悪い………」
「悪くはないさ。お前たちは銃弾飛び交う戦場にいる。俺は後方で情報集め。どちらが危険かを思えば、俺のやってることは苦労にもならないよ」
「……………」
兄の決意が固いことを悟ったグレイゴは椅子に深く腰掛けなおした。
「では、兄さんに情報を一つ教えてもらいたい」
「何だ?」
「この辺り………いや、クシュウのどこでもいい、戦車の情報はないかな? できるだけ強力で、できるだけ整備が行き届いてて、できるだけ簡単に手に入る戦車の情報とかあると嬉しいんだけど」
ウルリーカの言葉を借りて尋ねるグレイゴ。兄はその言葉を聞いてクスリと笑った。
「その野太い声じゃなければ声帯模写で食っていけるな、グレイゴ」
「四六時中お嬢といるからな。………で、心当たりはあるかな?」
「………あるといえばある」
「本当か!?」
グイと身を乗り出すグレイゴとは対照的に、テイラーの表情は晴れなかった。
「戦車の情報なら二つある。だが、どちらも簡単に入手できた情報の割に、実際に入手したという話を聞かない」
「ガセかもしれない?」
「ま、可能性は大いにあるだろう」
「まぁ、俺たちは気ままな武装トレーダーだ。ガセでも全然かまわないから教えてくれ」
「………わかった」
兄はあまり気乗りしない様子だったが、今の弟たちに道標がないことを考えると、ガセでも何か情報を与えるべきなのだと思うことにした。
「一つは北の湾岸エリア、大破壊前に軍港だった場所だ」
「軍港か。軍隊がいたなら、確かに戦車の一つや二つありそうだな」
「もう一つは『筋肉幕府』だ」
「『筋肉幕府』………ッ! そうか、彼らの領土なら確かに戦車は沢山ありそうだな」
「だが、『筋肉幕府』と争うわけにはいかないだろ?」
「うむむむ………」
「とりあえず、俺の知ってる情報は以上だ。詳しくはお前のBSコントローラーに情報を転送しておくから確認するんだな」
テイラーはそういってロケットピンガを自分のグラスに注ごうとする………が、瓶の口から液体がこぼれることはなかった。
「………ん、どうやら今日はここまでのようだな」
テイラーは名残惜しそうな手つきでロケットピンガの瓶をテーブルの上に置く。ゴトンという音が別れを知らせる合図だった。
「グレイゴ、俺が言えた義理じゃないが、お嬢さんのことをよろしく頼む。それから………あまりムチャはするなよ」
「兄さん………」
お嬢のことが心配なら、素直になればいいのに! 内で叫びながら、しかし声に出したのは静かな声だった。
「………次に会う時は、お尋ね者を倒した賞金でおごるよ」
「ふふ、楽しみにしているよ」
そして最後に握手を交わして兄弟は別れた。次に会う時が本当に来るならば、誤解が解けた状態で会いたい。グレイゴはそんなことを思いながら、兄のことを頭ごなしに否定するお嬢に向かって戦車の情報をどう伝えるか考えなければならなかった。
ウルリーカ「突然だけどグレイゴ。アタシ、明日から神様を信じるわ。もう毎日ちゃんとお祈りしてもいいくらい」
グレイゴ「それはなかなか信心深いことで、結構な話ですな」
ハヤト「ま、それくらいはしてもいいよね〜。何せ、こぉんなスンゲー戦車見つけちゃったんだし!」
ウルリーカ「二〇〇ミリクラスの主砲を積んだ重戦車なんて神様の導きでもなきゃ手に入らないものね!」
グレイゴ「まったくその通りですな」
ニモ「あの、皆さん………そろそろ、現実を見つめません?」
ハヤト「……………」
ウルリーカ「もう! あんなトンでもないモンスター、どうすりゃいいってのよ〜!!!」
グレイゴ「ニモ、正論も時には酷な話になるんだぜ………」
第五話「ライバル登場! 奴らの名前は究極求道者」
第七話「犬も歩けば棒にあたる! ツルノスが旅すれば何にあたる!?」
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