葬戦史R
第二章「世界の選択」


 一九四一年一二月二四日。
 本来ならばクリスマスイブの日であり、キリスト教を信仰していようがいまいが世界のあちこちでカップルがいちゃついていたはずの日。
 よりによってアメリカ合衆国はこの日を開戦日に定めたのであった。
 世界第一位のGNPを誇るアメリカ合衆国と、そのアメリカに匹敵するほどの国力を誇るようになってしまった大日本帝国の戦争。この報は瞬く間に世界中を駆け巡ったのだった。
 ドイツ第三帝国首都ベルリンはこの日、朝からずっと雪が降っていた。
 ホワイト・クリスマスか………。本来ならば、エヴァと一緒に素敵な一夜を過ごせたはずなのだがな。
 ドイツ第三帝国の国家元首であるアドルフ・ヒトラー総統は、ゆっくりと降り注いでベルリンを白く染めようとする雪を総統官邸の会議室の窓から見つめていた。
「総統、教授と副総統がお見えになりました」
 ヒトラーが副官として信頼しているユリウス・シャウプが右手を掲げるナチ式敬礼で報告する。そして執務室に招待されたのはドイツ地政学の権威であるカール・ハウスホーファー教授と、教授の愛弟子にしてドイツ第三帝国副総統であるルドルフ・ヘスであった。
「よくぞ来てくださいました、教授」
 ドイツ第三帝国を率いる総統のヒトラーであるが、しかし彼はハウスホーファー教授に対してためらうこともなく頭を下げた。ハウスホーファー教授の地政学はドイツ第三帝国に大きな影響を与えており、ヒトラーはこの教授に対して大きな敬意を抱いているのだった。
「申し訳ありませんが、もう少しお待ちください。まだ来ていない者がたくさんいますので………」
「いえいえ、お気になさらず、総統閣下」
 ハウスホーファーは絶大な権力を手中に収めながら、自分のような一教授に教えを乞おうとするヒトラーの態度に好感を抱いていた。故にヒトラーが用意した席に腰かけ、時が満ちるのをゆっくり待ち続けることにした。
「すまんな、アドルフ。少し遅れちまった」
 ドイツ第三帝国総統をファーストネームで呼ぶことができるのはヒトラー夫人であるエヴァ・ヒトラーとこの男くらいであろう。SA(突撃隊)長官であるエルンスト・レームが予定より一〇分遅れて顔を出した。こちらの世界の突撃隊は、長いナイフの夜による粛清もなく健在である。この世界での突撃隊は、ドイツの少年少女たちに正しき道を歩ませる一種のボーイスカウト的存在として広く受け入れられていた。ただ、長官であるレームの男色趣味によるスキャンダルだけは後をたたないが。
「エルンストか。まだお前は早い方だよ」
「お? そうなのか?」
 ヒトラーが国家社会主義ドイツ労働者党、いわゆるナチスの一党員だった頃からヒトラーとレームは親交がある。ヒトラーはレームを親友だと思っているし、レームもヒトラーを親友だと思っていた。それゆえに二人の会話は自然とくだけた口調になる。
 次いで執務室に姿を現したのはSS(親衛隊)長官のハインリッヒ・ヒムラーであった。漆黒のSS制服に身を包むヒムラーであるが、しかしヒムラー自身は小柄で、同じく小柄なヒトラーのような覇気も持ち合わせていない。田舎の雑貨屋でも営んでいるのが似合っている風貌の男であった。だが、それは外見だけのこと。彼は法の番人ともいえる存在であり、ドイツ国民に法を遵守させることにすべてを捧げていた。
「遅かったな、ヒムラー。また陰謀でも張り巡らせてたか?」
 レームはどのような相手でも乱暴な口調で話すが、ヒムラーに対する時だけはさらに敵意の棘がミックスされる。ヒムラーは冷徹な口調で言い返した。
「ふん、どこかの誰かさんがまた男とデートしているという話をもみ消すのに時間がかかりましてね」
 レームとヒムラーの仲は決して良好ではない。粗暴だが人情家でもあるレームと、規律を病的なまでに重視するヒムラーとではまるで水と油。仲良くできるはずもなかった。
 レームとヒムラーがにらみ合いを始めるが、ヒトラーは止めようともしない。二人のソリが合うはずがないと悟ったヒトラーは仲介に入ることをやめたのだった。ただ、二人が己の組織を使って潰しあうことだけは食い止めている。それは二人ともドイツには必要な人材であったからだ。
 次第に部屋の空気がギスギスしたものに変わり始める。ヒトラーは「いつものこと。我、関せず」という面持ちだが、しかし常識人であるヘスなどには居心地が悪い雰囲気であった。
「やあ、遅くなったな、諸君」
 重くなりつつある空気を変えたのは空軍元帥へルマン・ゲーリングの到着であった。肥満気味の体をド派手な軍服と銀狐のコートで包み込んでいる。派手ではあるが、悪趣味な格好にヒムラーは眩暈を覚え、レームとの皮肉の応酬を中断する。空気が変わり始めたことを感じたヘスが安心した声で呟いた。
「あとはリッペントロップとゲッベルスだけですね」
 外務大臣ヨアヒム・フォン・リッペントロップと宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルス。この二人を加えればドイツ第三帝国の主要メンバーが勢ぞろいすることになる。この主要メンバーの招集をかけたのはヒトラーであった。
「リッペントロップには外務省で情報の収集にあたってもらっている。ゲッベルスは今晩のニュース作成の指揮をとっている」
 だからこの二人はいくら待っても来ない。そう言ったのはヒトラーだった。ヒトラーは集まった一堂を見回して続ける。
「さて、今回諸君に集まってもらったのは言うまでもない。ついにアメリカが日本との戦端を開いたのだ」
「日米戦争か。一昔前なら子供でも結果がわかる戦いだったんだが………」
 ゲーリングが腕を組んで「うーん」と唸る。
「今の日本だったらアメリカにも勝つかもしれんな」
 関東大震災後の日本の急成長は恐ろしいレベルだった。日本とアメリカが戦争をし、どのような結末を迎えるか。今ではそう簡単に断言ができなくなっていた。
「ですが、日本はアメリカの奇襲で主力艦隊にダメージを受けたと聞いていますが?」
 ゲーリングの言葉に反論したのはヒムラーだった。
「主力艦隊にダメージを受けた日本を一気に攻め落とすことも可能ではありませんかな」
「だけどよぉ、アメリカだって戦備が十分に整っているとは言いがたいんじゃないのか?」
「確かにエルンストの言うとおりだな。奇妙な話だが、日米双方が戦争準備を行わずに戦争を開始している。故に双方共に深刻な兵力不足に悩まされている」
 レームの後を受け継いだのはヒトラーだった。ヒトラーは「さて」と一つ咳払いをしてから口を開いた。
「我がドイツは一つの決断を迫られている。それは即ち、日本とアメリカのどちらに手をかすか、もしくは中立を保つかの決断だ」
「戦争準備が整わぬ両国のどちらかに加担して恩を売るか、それとも静観するか、ですね」
 ヒトラーは自分の言葉の後を引き取ったヘスに頷くと、ハウスホーファー教授を見やった。「教授、あなたのご意見を聞かせていただきたい」
 ヒトラーの意向を受けたハウスホーファーは起立。そして口を開く。
「常々、私は生存圏レーベンスラウムを主張してきました。もう何度も聞いてきたでしょうが、もう一度繰り返します。生存圏とは即ち、我がドイツが繁栄するために必要な土地のことです。我がドイツは国際社会との取り決めで得ている領土だけでは生存圏を確保できているとは言いがたい状況でした」
「故に一時はポーランド侵攻すら視野に入れていた」
 ヒトラーの言葉に頷いたハウスホーファーは話を続ける。
「しかし我が国は戦争を起こす必要はなくなりました。何故か!? それは、遠く極東の友人が資源を安く売ってくれたからです!」
 遠く極東の友人、それは当然ながら大日本帝国であった。大日本帝国は新大地で取れる豊富な資源を安く、しかし大量に売って急速に発展していった。その日本との関係を強める方針を採ったのはヒトラー政権成功の一因であった。ハウスホーファー教授の言うように、ドイツは戦争を行わず国力を増大させたのだった。
「我がドイツにとって日本は何としても護らなければならない生存圏であると、私は主張します。よって、我が国は日本を助けるべきです!」
「私も教授の意見に賛成です。我が国は日本の側にたち、アメリカに戦線を布告すべきです」
 ハウスホーファー教授に同調したのは教授の教え子であるヘスであった。二人は熱心な眼差しで日本を支援するための戦争を主張する。
 うーん、やはりこうなったか………。ヒトラーは自分の予想通りに進む会議の流れに苦笑をこぼした。ハウスホーファー教授は大の日本通であり、何でも日本の作法の通りに「ハラキリ」ができるらしい。そんな彼が「日本と共に合衆国を叩くべし」と唱えるのは当然であるし、教授の教え子であるヘスがそれに同調するのも簡単に想像できる。
「しかし教授、我が国はいわゆるランドパワー、陸軍国家です。日本とアメリカが主戦場とする太平洋ではたいした活躍が期待できないと思われますが?」
 ヒトラーに自分の意見が画餅にすぎないと言われたような気がした教授はムッと表情を不機嫌に曇らせる。
「何も兵を送るだけが戦争ではありますまい」
 たとえば兵器の供給を行うだけでも日本にとっては負担が軽くなる。いい提案ではありませんか。そう言ってズレた眼鏡を中指で直したのはヒムラーであった。ヒトラーはヒムラーの意見に同意する。
「そうだな、ヒムラーの言う通りだ。我が国で開発したジェットエンジンの資料を彼らに与えようと、余は考えている」
「ジェットですって!?」
 ヒトラーの発言に驚きの声を上げたのはゲーリングであった。ゲーリングは慌ててヒトラーに翻意を願う。
「総統、ジェットはドイツを除けば世界中のいずれの国でも完成していない技術です! いくら日本を支援するとはいえ、そのようなものを渡すのは………」
「では、ゲーリングは日本が負けてもいいというのかね!?」
 ヒトラーが机をしたたかに叩く音が響く。その音の大きさにゲーリングは思わずおののいた。総統は本気である。音からそのことがうかがい知れた。
「すべてのドイツ国民は、あの極東の友人に感謝せねばならんのだ。ヘス、余はかつてお前に『我が闘争』を筆記させた。その書で余は日本人を我らアーリア人の真似しかできぬ劣等民族であると書かせたな? だが、実際にはどうだ! 日本人はドイツ人にも負けず劣らずなほど勤勉で、新大地の資源という裏づけがあったとはいえ、短期間であれほどの急成長を成し遂げた。彼らは決して劣等民族ではない! すべての日本人は余を、そして余を総統と崇めるドイツ人を愚弄する権利があるのだ。にもかかわらず彼らは余とドイツに手を差し伸べてくれた。余は、あの日本人の心にサムライを見たのだ。余は、あのサムライたちを裏切ることだけはしたくない」
「総統………」
 ヒトラーの言葉に感動して拍手したのはハウスホーファーであった。それに続くのはレームであった。「そうだ、今こそドイツは日本人に恩を返さねばな」
 ヒムラーもヒトラーの言葉に感動を示すことこそなかったが、しかしその方針には賛成のようだった。ジェットエンジンを独占しておきたかった空軍元帥といえども、これ以上の抵抗は不可能だった。
「よし、では大至急リッペントロップに日本への技術提供を呼びかけさせよう。そしてゲッベルスにはドイツ国民向けの親日排米のプロパガンダを行わせる。余とドイツは日本を、最大限支援してみせるぞ」
 それがドイツ第三帝国の選択であった。



 ドイツで独裁者とその一味が、熱狂をもって日本支援を決めたことに対し、海峡を隔てたこちらの国は純粋に利益のみを追求しようとしていた。
 大英帝国首都ロンドンでの一二月二四日の一幕だ。ロンドンはどんよりとした雲に覆われていたが、しかし雪も雨も降っていなかった。
「君は、どうしたいのかね?」
 キャンパスに向かい、筆を走らせる肥満体の老人は「日米戦争に対し、君はどうするつもりだ?」と尋ねてきた老人に対しそう尋ね返した。質問に質問で返された老人は皮肉な笑いを浮かべて言った。
「もし君が首相ではなく学生で、私が元首相ではなく教師であったなら、私は君に〇点をつけてあげよう」
 元首相の老人、ロイド・ジョージはそう言った。そして現首相の老人、ウィンストン・チャーチルは筆を置いて葉巻を咥えた。
「質問に質問で返すと〇点………。確かに、そうだったな」
 チャーチルは葉巻の端をナイフで切り、火をつける。濃厚な紫煙がチャーチルの肺を満たし、チャーチルはそれをすべて吐き出した。元首相は再び口を開く。
「遊びはこれまでにして、もう一度尋ねようか。君はどうするつもりだ?」
 ロイド・ジョージが再び質問した時の顔を見て、チャーチルは満足げに言った。
「そう、その表情だ」
「………?」
「政治を語るのに必要な表情さ。先ほどまでのあなたの表情は政治を語るに相応しくなかった」
 ロイド・ジョージの質問は大英帝国の未来に関わる話だ。先ほどまでのような皮肉まじりの表情では困る。政治の話は真摯に話し合わなければならない。
「君は、真面目だね」
「真面目でなければ政治家はできん………。さて」
 チャーチルは吸い終えた葉巻を灰皿に押しつぶした。そしてロイド・ジョージの質問にようやく答える。
「我が国は勝ち馬に乗る。勝ち馬に乗り、戦後世界への発言力を残す」
 チャーチルの答えは日米双方につかず離れずの姿勢を取り、戦況が決定的になれば勝っている方を支援するというものだった。そしてその方針を採る理由は………。
「………もはや日の沈まぬ国の凋落は止められない」
「そうだ。今まで日が沈まなかった分、長い夜が来るだろう。だが、私は夜の闇を照らすランプを買うのだ」
「ランプの選定、これだけは慎重にしてくれたまえ、現首相?」
「任せておきたまえ、元首相」
 現在と過去の首相たちの会話はそれだけで終わった。元首相は現首相の決意を聞けて満足したのだろう。さっさと傘を差して帰っていった。空から水分が降り注ぐどころか晴れ間すら見え始めた天候にも関わらず、ロイド・ジョージは傘をさして帰った。
「あれこそが真の英国紳士の姿だ」傘で覆われて見えないロイド・ジョージの背中を見据えてチャーチルは呟いた。
「そして真の英国紳士は、日の沈まぬ帝国の復活を望んでいる………」
 日の沈まぬ帝国。かつて繁栄を極めた大英帝国はそう呼ばれていた。しかし先の欧州大戦、世界恐慌、そして何より日米の急成長によってイギリスの落日はもはや止まらない。国力は日に日に落ちる一方だ。その帝国の復活を願うロイド・ジョージが自分を訪ねてきたのは、今度の日米戦争で帝国の復活が望めないかどうかを尋ねにきたのだろう。
「………時間を戻すことは誰であろうともできはしない。だが、私は戻らぬ時間を運命だからといってあきらめはしない」
 ロイド・ジョージの姿を見送りながら、チャーチルはそう呟いた。彼は自らのすべてを投げ打ってでも大英帝国の没落を少しでも遅くするつもりであった。その決意が報われるかどうかはわからないが、チャーチルは死ぬまで運命との戦いを諦めなかったという。



 アメリカ合衆国首都ワシントン。
 そこにアメリカ合衆国の政府中枢であるホワイト・ハウスがある。
 そこの主に呼ばれたサイモン・エドワーズ副大統領は、その白亜の屋敷の一室で待たされていた。
 今年で還暦になるサイモン副大統領は、元々は合衆国海軍の出身であり、かのグレート・ホワイト・フリートにも参加したことのある。その時に日本に立ち寄って以来、彼は無類の親日家として名を馳せていた。
 彼は元軍人だけあって体つきは年齢にそぐわぬほどに筋骨隆々としている。その秘訣は常日頃から欠かさぬトレーニングにある。
「………ッ! ………ッ!!」
 一室で待たされる間、彼は何事かを叫びながら左右の拳を交互に突き出していた。彼の叫び声は裏声全開であるので聞き取りにくいのだが、本人はこう叫んでいるつもりである。
「スシッ! スキヤ〜キッ!! バンザ〜〜イ!!!」
「……………」
 目の前でのランニング・パートナーの奇行をアメリカ合衆国大統領 フランクリン・ディラノ・ルーズヴェルトは呆れた面持ちで見つめていた。
「………よくも飽きもしないもんだな」
 そのルーズヴェルトの呟きは小さなものであった。だが、サイモンはそれを聞き逃さなかった。これがかつて戦艦アーカンソーの初代艦長をも務めた男の真髄であった。
「おお、大統領! ………いや〜、これはお恥ずかしいところを見せてしまいましたな」
 アッハッハッハッとサイモンは大笑する。副大統領というポストにあるとは思えない、実に人に好かれる笑顔であった。
「ところで何をしていたのかね、副大統領?」
 ルーズヴェルトは汗をかいているサイモンにタオルを渡してやる。「サンキュー」とサイモンはタオルを受け取って汗を拭う。
「はい、ジャパニーズの格闘技の『カラテ』ですよ」
「ほう、あれが噂に聞く『カラテ』なのかね?」
 ルーズヴェルトが物珍しそうに聞く。
「はい。ジャパニーズはみんなこれで体を鍛えているのです。『カラテ』のチャンピオンの強靭な肉体は銃弾をも弾き返し、その拳は戦車の装甲すら貫くとか………」
 真顔で語るサイモンをルーズヴェルトはやや哀れみが混じった視線で見つめる。そしてサイモンの肩を叩いて言った。
「とにかく、行こうか。みなが待っている」



 とりあえずはホワイト・ハウスの一室の会議室に一同は集められた。
 面々が凄い。
 まずは合衆国第三二代大統領 フランクリン・ルーズヴェルト。
 そして副大統領 サイモン・エドワーズ。
 海軍長官 フランク・ノックス大将。
 合衆国艦隊司令長官兼海軍作戦本部長 リチャード・インガソル大将。
 太平洋艦隊司令長官 ハズバンド・キンメル大将。
 陸軍長官 アレックス・モズビー大将
 以上のように軍の首脳部と大統領、副大統領との会議であった。海軍の高官が多いのは日米戦争が太平洋を主戦場とするが故だ。海の上では陸軍はものの役にもたたない。
 しかし何故にこのような場所に副大統領「でしかない」サイモンがいるのだろうか? 合衆国における副大統領の権限というのは、驚くほどに少ないというのに。
 それはサイモンが事実上の海軍のボスであるためだ。
 前述のように彼は海軍出身である。副大統領の前は海軍長官や航海局を歴任していたのである。それだけに海軍への影響力は強いのだ。
「陸軍は上手くやってくれたようだな」
 まずルーズヴェルトが口を開く。
「はい。トラックへの空襲は成功し、戦艦や空母などの艦船の多くを撃沈しました。また、フィリピンの部隊も台湾の航空基地を爆撃。これによりフィリピン方面の制空権は完全に我々のものです」
 モズビーがそう付け加える。モズビーの口調はどこか焦りがみえていた。陸軍の成果を必要以上に強調していた。
 実は、この世界の合衆国陸軍はかなり冷遇されている。海軍の事実上のボスのサイモンが副大統領であるだけでなく、ルーズヴェルト自身も海軍贔屓であるからだ。 モズビーの前任者であるマーシャル大将はこれを打破するべく幾度と無く交渉したものの、マスコミに対し絶大な影響力も持ち合わせているサイモンの妨害によ り神経性の胃潰瘍を患い、引退。そこで彼、モズビーが陸軍長官を務めることになったのだった。彼は陸軍の少ない予算の大半を航空機に回した。それがあってこそのトラック空襲であった。故に今回の戦果で陸軍の権限拡大を狙っていた。
「では、オレンジ・プランに基づいてトラックへの侵攻作戦を開始するのだな?」
 ある意味で先のトラック空襲を実行させた張本人であるサイモンが身を乗り出しながら確認する。
 オレンジ・プラン。それはアメリカ合衆国が長年研究してきた対日作戦プランのことである。これによれば、まずはマーシャル諸島を攻略し、第二段階としてトラック諸島やマリアナ諸島を攻略し、しかるのちに小笠原諸島、最終的に日本本土をを攻撃するというものだ。
「はい。すでにキンメル大将にはその準備に取り掛かってもらっています」
 とインガソル。
「しかし真珠湾の燃料施設が忌々しいジャップに爆破されてしまったせいであまりすすんでいないのが現実であります」
 キンメルの声は日本憎しに染まっていた。故に「ジャップ」という下品な言葉が思わず口をついてでた。
「キンメル君」
「ジャップ」を耳にしたサイモンの目が光る。
「はっ、何でしょうか?」
「『ジャップ』ではない。『ジャパニーズ』だ」
「イ、イエス・サー」
 キンメルはやや緊張してそう答えた。
 何せこの副大統領は気性が荒く、ソリが合わないと思われたら最後。どこか遠くに左遷させられるのだ。例えば合衆国海軍のエリートだったアーネスト・キングは彼の不興を買い、アラスカ方面に左遷させられたのだ。
 彼の不興を買うわけにはいかない。己の能力よりも人脈で出世してきていたキンメルはそう思っているのでこの御仁の言うことは素直に聞く。
 ……………
 こうしてこれからの海軍戦略を二時間ほど話し続けた。
「しかし副大統領?」
 会議後、私室でルーズヴェルトはコーヒー片手にサイモンに問うた。
「君は親日家として名高い男だが、あの会議場では日本を潰す気満々に見えたぞ?」
 ルーズヴェルトの問いにサイモンは薄く笑った。
「いいえ、大統領………。私は、ジャパンを愛しています」
「ほう?」
「ですが、あの国は変わりました。あのカントウ地方での震災があるまではかの国は勤勉で、真面目で、尊敬すべき国家でした。しかし、それからの大繁栄以来、 かの国から『ヤマトダマシイ』というものがなくなってしまっています。そのように堕落したジャパンを見るのは辛い………。私はこの戦争で彼らに『ヤマ トダマシイ』の何たるかを思い出してもらいたいのです」
 ルーズヴェルトは呆れて返っていた。
 ………コイツ、ここまでジャップにかぶれているとはな。
 だが、そのようなことは臆面にも出さず、「そうか。愛すればこそ鞭を振るうというわけだな。君は実に立派だよ、副大統領」と言った。



 繰り返すことになるが、大日本帝国の首都は東京から大阪に移っている。大阪の梅田には日本の各省庁のビルディングが集まり、日本の中枢を形成していた。
 そのビルの中に帝国海軍軍令部は存在する。軍令部のビルは俗に「扶桑ビル」と呼ばれている。一九三〇年代に大日本帝国で発覚し、建築業界を大きく揺さぶった耐震強度偽装事件。軍令部のビルはその耐震強度偽装事件で渦中にあった男が設計したのであった。新しくビルを建てる予算が軍令部にはなく(海軍は軍令部のビルを新しく建てるくらいなら戦艦を一隻造る方を選んだのだった)、仕方なしに軍令部は許された小額の予算でビルの補強工事に着手。スマートにそびえたっていた姿は大きく変わり、まるで戦艦扶桑の艦橋のようにツギハギになっていた。
 だから「扶桑ビル」。まったくもって不名誉な名前だと思うが、人の口に戸は建てられないのだからしょうがないだろう。それにこのビルが、人間の油断が引き起こしたといってもいい耐震強度偽装問題を後世に警告し続けることにもなる………。
 責任ある人間は絶対に油断してはならない。そう考える軍令部次長遠田 邦彦中将にとって、「扶桑ビル」と呼ばれる軍令部ビルは自分たちへの戒めであるとも言えた。
 そんな彼の表情は不機嫌そのものであった。遠田の下で働いている押川 恵太少佐は、タバコを吹かして貧乏ゆすりを止めようとしない上司の不機嫌の矛先がいつ自分に向いてくるか気が気ではなかった。
「おい、押川」
 ぶっきらぼうな遠田の口調。それは遠田が怒っている時特有の口調である。押川は「そらきた」と身構えながら返事する。
「はい、何でしょうか?」
「お前、どう思う?」
 遠田の言葉は徹底的に説明というものを欠いている。しかし理不尽なことに、これでピントのズレた返事を返せば、遠田は容赦なくカミナリを落としてくる。そのことをよく知る押川は、慎重に言葉を選んで答える。
「頭痛がしますね」
「……………」
 遠田はタバコを吹かしながら無言を貫く。押川の言葉の続きを待っているようだ。押川は恐る恐る言葉を続ける。まるで地雷原を歩かされているような気分だ。
「戦艦一隻に空母二隻、重巡三隻に駆逐艦二隻が沈没ですよ。開戦からいきなりこんな被害を受けた戦争は有史以来初めてじゃないでしょうか?」
「そう、だな」
 遠田は吸い終えたタバコを水が入った灰皿に落とすと次の一本を取り出して咥える。
「俺たちは間抜けだった。俺『たち』はな………」
 遠田の口調に抑えきれぬ怒りの火花が宿ったのを押川には確かに見た。遠田は合衆国が第三艦隊に先手を打ち、奇襲攻撃をしかけてくると何度も警告していた。にも拘らず海軍の誰もがその意見を聞き入れなかった。海軍連合艦隊司令長官の山本 五十六大将など遠田を小ばかにする口調で言った。
「アメリカがそんな卑怯な手段にでるものか。あの国はフェアプレイ精神を重んじるんだからな」
 結局、遠田の見識は正しかったことが実証された。戦艦一隻、空母二隻、重巡三隻、駆逐艦二隻を犠牲にして。艦を失ったことは惜しい。だが、艦はまだ造りなおせばいい。造りなおした艦は沈められた物より新しく、強力な物に仕上がるだろう。だが、死んでいった者たちは二度と戻るまい。海軍にとって至宝ともいえた熟練された将兵。日米戦争中にあれだけの水準の将兵がそろうことは二度とあるまい。熟練された将兵を造るのに必要なのは長い時間だった。平和で、殺しあうことのない時間が。そんな時間が戦時中に作ることはできない………。
「まぁ、愚痴ってもしょうがないですよ。これからどうやって失点を返すのか、それを考えましょう」
 押川の意見はもっともであり、そして遠田にもわかりきっていることだった。遠田はとりあえず怒りを沈め、失点を取り返す方法を考えることにする………前に、押川に一つ尋ねた。落ち着いてみて初めてわかったことだが、押川は妙に時計を気にしてそわそわしていた。どうしてそんなに時間を気にするのか遠田は知りたかった。
「いや、その、実はですね」
 遠田に質問され、しどろもどろになる押川。しかし彼に黙秘権はなかった。退路がないことを悟った押川はしかたなく財布から一枚のチケットを取り出した。
「実は、今晩に帝国歌劇団の公演を見に行く予定がありまして………」
 なるほど。遠田は押川がそわそわしている理由を知って頷いた。
 帝国歌劇団。大正時代に誕生した国営の劇団であり、新宮寺 さくらや神崎 すみれなどの名美人女優を多数抱えるために国内外問わずに大人気であった。昨年、一九四〇年に日本で開催されたオリンピックの際には開会式と閉会式を彩り、大いに盛り上げたことは記憶に新しい。押川が持っていたのはその帝国歌劇団のチケットでは一番高く、ファンの間では宝石より貴重だとされるS席のチケットだった。
「ほーほーほー」
 遠田はわざとらしい口調で声をあげる。そして押川が持つチケットを取り上げると意地悪く言った。
「国の一大事だというのに、君は暢気に演劇鑑賞かね。エラくなったなぁ、押川 恵太少佐ぁ?」
「いや、その、人間には休息も必要だと………」
「人間に休息が必要なのは認めるが、今は却下だ。今日は開戦初日で、しかも海軍が大損害を受けた日だぞ。軍令部員は全員残業をしてもらう」
 そういうと遠田はS席のチケットを勢いよく破り捨てた。それを見た押川は口から心臓が飛び出すほどに驚いた。
 飛び出た心臓を食いながら押川は不機嫌極まりない上司にインネンをつけられた我が身の不幸を呪った。しかし一月後、彼は自分のデスクの上に帝国歌劇団戦時特別公演のSS席チケットが置かれていることに気付くことになる。宝石より貴重なS席のチケットより、さらに貴重なSS席チケットを送ったのは遠田であった。そして調子のいい押川は、SS席チケットを送られたことで週の半分が徹夜になるという戦時の軍令部業務の辛さをあっさり忘れ去ったのだという。



 しかし押川少佐がSS席チケットを手にするのは先のこと。押川が愚痴をぶつくさこぼしながら残業に励んでいる時、押川が見に行くことができなかった帝国歌劇団の公演は大成功で幕を閉じようとしていた。
 カーテンコールは二度、三度と繰り返され、その度に劇場が揺れるほどの歓声がわきあがる。
「お疲れ様です」
 帝国歌劇団の座長を務めているのは新宮寺 さくらであった。東北の田舎から上京し、そして演劇の勉強を必死に重ねて座長になったという努力の人であった。そのひたむきな演技は人の心を捉えて離さない。彼女は舞台の上でも、私生活でも、常に真摯であった。それは公演終了後の言葉にも表れていた。
「日本がアメリカと戦争を始めてしまいましたが、私たちは最高の演技を続けていきましょう。みんなが元気を出し、そして平和が近づいてくるような演技を………」
 さくらの熱心な言葉を歌劇団の皆は拍手で迎える。つまりはそれが帝国歌劇団の戦争開始の合図であった。帝国歌劇団は日本中各所で公演を続け、人々に活力を、そして平和への願いを訴えていくのであった。
 その劇団員の中に李 紅蘭はいた。中国出身で、私服としてチャイナドレスをまとう彼女は日本に来た時、神戸の方にいた。だから彼女の日本語には関西のなまりがあり、そして彼女の精神は関西の気風に従っていた。すなわち明るく、そして冗談を忘れない精神である。
 だが、その彼女の表情は暗かった。歌劇団の一同は、それは戦争が始まったからだと考えていた。彼女は辛亥革命で両親を失い、日本に来たという暗い過去がある。今回の日米開戦がその時の記憶をよみがえらせたのかもしれない。劇団員の者たちはそう考え、紅蘭をそっとしておいてやることにした。こればかりは本人が解決すべき課題であろうから。
 しかし本当は違っていた。李 紅蘭の表情が暗いのは別の訳があった。それは………。



 一九四二年一月五日。
 日本最大の軍港がある広島県呉市。
 そこに第三艦隊がひっそりと帰ってきた。
 ここを出るときに満ちていた勇壮さなど欠片もない。そのようなものはすべてトラックで踏みにじられた。
 その様はまさに………
「無様だな」
 あの混乱の中で単身奮戦していた重巡 衣笠の通信兵である荻本 研少尉が苛立ちを抑えれずに呟いた。
 荻本は自分の軍服のズボンが何ものかに引っ張られているのに気付く。
「ねえねえ、おじちゃん」
 明らかに軍艦の艦橋に似つかわしくない声。
「あのねえ、私はまだ三〇歳なの。『おじちゃん』は止めてくれないかな?」
 荻本は諭すように言いながら内心では毒づいている。
 ………畜生、この衣笠は重巡なのだぞ!保育園なんかじゃねえ!!
 そう、荻本のズボンを引っ張っていたのは子供だった。まだ五歳くらいの小さな子供。
「おしっこ」
 子供は荻本の懇願など無視して自分の要望を述べた。
「……………」
 荻本はムスッとした顔のまま黙る。だが、それも数瞬のこと。すぐさま気を取り直して「おい、後は頼むぞ」と言い残して無線室を後にする。
「少尉ィ〜………早く帰ってきてくださいよ〜」
 室内の部下は情けない声で答えた。彼の背中には赤ん坊。そして彼の手にはガラガラが握られている。海軍軍人としては冗談としか思えない姿だ。多分、今の彼は海軍に入ったことを後悔しているだろう。
 第三艦隊はトラックより撤退した。
 だが、それはトラック諸島がアメリカ軍に蹂躙されること許すということだ。そこで軍令部次長 遠田 邦彦の名前で、「第三艦隊はトラックの民間人を収容して帰って来い」という命令が併発された。
 だからトラックの民間人は第三艦隊の艦艇たちに便乗している。
 子連れの者たちは、あの戦いで一番奮戦した武勲艦の衣笠に収容されたのだ。たいした損傷もなく、そしてあの状況で独り戦い続けた姿は子供たちの眼に強く焼きついていた。
「だからって何で俺たちがガキの面倒見なきゃなんないのよ!!」
 子供をトイレに連れて行きながら荻本は呟いた。
 仕方ないか。衣笠は重巡洋艦といえども揺れは激しい。いや、客船などとは比べ物にならないくらい酷い揺れだろう。海に慣れている海軍軍人ならともかく娑婆の人間では耐え切れなくなることもある。
 そう、この子供たちの親は全員船酔いで、今は医務室で寝ているのである。
 ともあれ彼らはトラックの民間人を全員無事に日本本土に送り届けてきた。軍の意義は民間人の安全を護ることなのだから胸を張ってもいいかもしれない。
「あ………」
 子供が泣きそうな声で何か呟き、体を震わせる。そして訴えるような瞳で荻本を見る。
「オイオイオイ」
 お漏らしかよ、勘弁してくれよ………。
 荻本は自然と涙がこぼれてきた。



 唯物主義者の独裁者、ヨシフ・スターリンが治めるソビエト連邦にとって一二月二四日は何の意味も持たない日であった。だが、それから四日後の一二月二八日は生涯忘れられない屈辱の日になった。
「今こそ好機である」
 会議室の壇上で独裁者はそう言った。スターリンの幕僚たちにニエットはなかった。もしもその単語を口にした場合、発言者に待つのはシベリア行きという残酷な運命だけだからだ。幕僚たちは我が身のかわいさ故にスターリンの言葉に追従した。
「同志スターリンの仰る通りであります。米帝主義者との戦いのために日本が中国に送り込んでいる義勇兵は太平洋に移動するでしょう。この隙に我が赤軍の精鋭を送り込み極東を共産化するべきです」
 中国の共産党と国民党による内戦は日ソ両国の代理戦争とも言える様相を呈していた。ソ連が援助する中国共産党と日本が援助する中国国民党による内戦は、一九四一年一二月まで終わりが見えない泥沼の戦いであった。
 しかし日米開戦によって国民党への援助は削られることになるだろう。こうなれば後はこちらのものだ。ソ連は中国内戦に本格的介入を行い、赤軍の精鋭を派遣して中国を赤く染め上げるのだ。
「うむ、その通りだ」
 幕僚の言葉に満足げに頷くスターリン。スターリンは陸軍と空軍の総司令官に、中国出兵の準備を進めるようにと指示を飛ばす。
「ふふふ、極東の共産化に成功すれば、次は欧州の共産化だ。ユーラシア大陸が我がソビエトの領土となればアメリカだって敵ではないわ………」
 スターリンは自らの思い描く世界に思いをはせる。歴史上、どのような英雄でもなしとげたことがないユーラシア制圧、そして対米最終決戦の末には世界征服である。私が、このヨシフ・スターリンが世界のすべてを支配するのだ………。
 だが、スターリンの夢想は慌てて開け放たれたドアの音によって中断を余儀なくされた。乱暴にドアを開けたふとどきものを睨みつけるスターリン。慌てすぎて呼吸を乱した男をシベリアに送ってやるつもりであった。しかし、スターリンは男の報告に目を剥いた。
『………繰り返しますが、我が国は隣国と手を携え、もう片方の隣国の暴虐に対する防波堤となることを誓いました。私たちポーランドと手を取り合う国とはドイツであり、立ち向かうべき敵はソビエト連邦です』
 ラジオから流れてくる声はポーランド政府の公式声明であった。スターリンは拳をラジオに叩きつける。憐れなラジオはスターリンの拳でガシャンと音を立てて破壊された。ラジオを破壊した際に手を切ってしまい、拳から血を流しながらスターリンは荒い呼吸を抑え切れなかった。
 ドイツとポーランドによる防共協定の締結。その条文によれば、今後ソビエト連邦が他国に軍隊を派遣した場合、ポーランドとドイツはソビエト連邦に対して戦線を布告するという物だった。つまり、中国に赤軍を派遣すればポーランドとの国境からドイツ・ポーランド連合軍が攻め寄せるというわけだ。日本との貿易で国力を満たし、ヨーロッパ最強の陸軍の座を取り戻したといわれているドイツ軍が………。スターリンの夢はいきなり頓挫を余儀なくされた。
「ふ、ふざ、ふざけ、ふざけるな!」
 怒りの感情がスターリンの胸中で渦となり、スターリンは言語障害をきたしていた。そんなスターリンの怒りの矛先は外務大臣であるヴィヤチェスラフ・モロトフへと向いていた。
「モ、モロトフ! この責任、どうやってとるつもりだ!!」
 モロトフの顔面のみならず全身から血の気が引いていた。生きながら死人のように青くなってしまったモロトフ外務大臣は口をモゴモゴさせるばかりで、一言の弁明もできなかった。それがスターリンの怒りを余計に刺激した。
「モロトフ! 貴様はシベリア行きだ! もう二度と帰ってくるな!!」
 スターリンはモロトフとは対照的に、全身の血液を顔面に集中させたのではないかと思われるほど顔を興奮で赤くしていた。
 ヒトラーのいう「日本に対する最大限の支援」とはこれのことであった。このヒトラーの支援によって日本はアメリカとだけ戦えばよいという状況になったのだった。
 これが、もっとも近く、そしてもっとも遠い世界における一つの選択の結果であった。


第一章「待ったなしの真剣勝負」

第三章「Only you」

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